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制裁裁判、法廷録音で話題の裁判!気になる判決の行方は!? 傍聴小景 #105(ストーカー規制法)

今回の記事は過去の記事から続きとなります。是非過去記事よりお読みください。

「もし目指せるのなら、裁判官、検察官、弁護士どれを目指す?」などと質問をいただくことがあります。

傍聴すればするほど、三者への憧れ、尊敬の念は強くなります。だからこそ、「どれも無理」という答えになります。それぞれのプロフェッショナルな信念まで到達する自分の姿というのは、どうやっても思い浮かびません。

あえて言うとしたら、一市民の傍聴人としてのプロフェッショナルを目指すということでしょうか。


ということで、法曹三者の奮闘と被告人本人、そして傍聴人としても色々考えさせられた裁判の最終盤の模様をお届けします。


開廷前~各種申請まで

私が最初に傍聴した第2回公判は傍聴人が7人でした。その後、制裁裁判の報道などで次の回は一気に40~50人に増えました。

しかし、そこから減って、裁判の山場となる証人尋問や被告人質問では、よく見る傍聴マニアの方と、この裁判を熱心に追っている方くらいになりました。

正直、僕も途中で「もういいかな」と思うこともありました。しかし、巡り合わせというのは不思議なもので、普段は裁判の予定でパンパンな私の傍聴スケジュールもこの裁判とはあまりバッティングせず、ここまで見続けることができました。


そして、裁判のクライマックス、検察官の論告求刑、弁護人の最終弁論を行う今回、傍聴席は過去最高の60~70名ほどになりました。空席が僅かにある程度。
本日の大切さを知っているのでしょうが、途中あんま人がいない回もあったのに、みなさんどうやって情報を得たのでしょうか?

「Q.この裁判を何で知りましたか?」というアンケートを取りたいくらいです。


さて、今回も長いので余談も程ほどに。

開廷前からいろいろとバタバタしていました。書記官は書画カメラの動作確認などをしています。今日はなにかしら使うのでしょう。

傍聴席の最前列左側3席は裁判所によって席が確保されていました。
そしてその席には、聴覚に障害を持っていると思われる方が1名、その両脇に補佐の方でしょうか、ホワイトボート、タブレット端末など様々な用具を持って傍聴の準備をされています。

前回の裁判で、手話通訳についての申請がありました。裁判所は用意しないけど、傍聴席に限っては申請次第ということだったので、そういう措置がなされたのでしょう。

何かいろんな物事が一つずつ進んでいる過程を間近で見れて感動します。


被告人と弁護人が入廷します。

とっとこ進む弁護人に対し、被告人はとても足取りが重くとても辛そうにしながら入廷。裁判長からも心配の声をかけられましたが、なんとか続けることに。

しかし時間になっても裁判がなかなか始まりません。弁護人が、自身のパソコンと裁判所のモニターの接続に戸惑っている様子。
書記官が近づいて、「試しに映しますか?」と聞いたら、「今、映してこっちがやりたいのがバレるのは困る」と拒否。

いったい、何が始まるというのか…


さぁ始まる!といったところで、久々!弁護人から法廷内録音許可の申請がなされました。

弁「前回で分かる通り、被告人本人は内容を覚えていません。きちんと聞きたいという思いがあります。刑事訴訟規則47条2項(録音の申請について)以外の本人の必要性として録音許可を求めます」

裁「録音の許可はいたしません」
弁「今の決定に異議があります」
裁「検察官、異議への意見は」
検「異議には理由がありません」
裁「異議を棄却します」

いつもの流れかと思ったら、ここからが違いました。

弁「では、被告人本人からの申請を行います」

紙を取り出す

被「録音のお願い。裁判は、早口、難解なので、議題すらわからないのが現状です。喘息などの症状もあり、記憶も曖昧です。文字表現もない中、何を話してるかもわかりません。
私は第2回公判では死んで詫びるなど言いましたが、生死に関わることでしたが、特に回答もありませんでした。どうか、録音についてどうか認めてください」

裁「はい、録音は認めません」
弁「本人が、話半分になるからって言ってるのに。せめて理由を教えてください」

裁「必要性と相当性です」
弁「そんな浅い理由で納得できるか」

裁「発言を禁止します」
弁「せめて理由だけでも教えてくださいよ」

裁「発言を禁止すると言っているだろう」
弁「せめて文末だけでも直した方がいいと思いますけどね」

裁「これ以上発言したら、退廷を命じますよ」

被告人「泣)私、一人じゃ頑張れません」
裁「まだ一人じゃないから、あなたの話はわかりましたから」

弁護側も変わらずであれば、裁判官も変わらずといった対応。

円滑な審理のためにも、なにかしら言えばいいのにとも思うんだけど、そういうことではないのかなぁ。

一方で、弁護側に対しても思うところ。
前回の裁判で録音を望む意見としてはよくわかったんだけど、こちらとしては、公判調書を詳細に仕上げてくれという申請でもいいのでは?という思いにもなったり。
まぁこれまでの経緯で調書の出来に納得がいかないのもあるし、そもそも録音自体は許可がでればできるんだからという主張なのはわかるんだけど。


そして前回に続いて、法廷内手話通訳に関する意見書を提出。

今回、聴覚障害がある方のノートテイカーとして2名、市町村の公費にて支払われることが決まったそう。
いったい、どういう話の流れがあったんだ…。そっちも気になる。

しかし、もし今後、何人か傍聴席に来るようになれば、傍聴席が埋まってしまう可能性があるから、裁判所の費用で取り組んで欲しいと意見。

裁「私から申し上げる立場ではありません」

弁「申請したら、過去に実施例がある」
裁「費用負担についての話なので、制度がなく、お金を出せない。傍聴席でのことを禁止しないことはできるけど。そんな偉くないですから私。支出権限はないんです。意見としては聞いておきます」

弁「前向きにということでいい?裁判官は独立した権限をお持ちですよね」
裁「私に話されても仕方ない、もう進めますよ」

弁「誰が決めるの」
裁「少なくとも私ではないです」

この辺りはお国感が出てましたね。
民間企業だったら、答える立場になくても、調べて返答しますとなりそうです。裁判自体がそういう場でないというのはわかりますが、やはり少し寂しい気も。

なんとも難しい話ですよね。
傍聴席にたくさん人がいるんだし、その問題に関心がある人もいるから説明して欲しいという思いもあれば、人がたくさんいて説明するなら、人を傍聴席に総動員したらいいのかともなってしまうのは違いますし。


そして、最後に処理しきれていない証拠の対応がありました。

その中で、前々回に出た証拠の日付が見にくかった証拠について、検察官が新しい証拠を追加で提出したようです。
それについて、裁判所は追加という対応にしたのですが、弁護人としては古い証拠の方を棄却決定と、その証拠で証人尋問を行ったことに意見を伝えていました。


最終的には、また退廷命令出す云々の話の流れで、「今日は拘束室も用意しているから、帰れないよ」なんて恐ろしい言葉も出つつ、審理が進むことになりました。

退廷はともかくとして、暴れていないのであれば、どうして拘束されることが前提のような話になるんだと、ここは少し困惑などしつつ、ようやく本日のメインの話になるのでした。


検察官の論告

ようやく巡ってきました検察さんのターン、というところで書記官さんがバタバタと動きます。
証言台横にある書画カメラをオンにして、検察官席、弁護人席の上にある大型モニターが点灯しました。前回、弁護人から指摘を受けて検察官がきちんと検討してくれたのですね。こういうとこ好き(*'ω'*)

ただ、今回の法廷、70人くらいが入れる大きな法廷なんですけど、縦に長い法廷なんですね。後ろの方に座ってた人はモニター見れなかっただろうな。これは、法廷の設計上の話だけど。


そして、書画カメラが証言台にしかなく、検察官は自席に立っていたので、なんと書記官が書面を受け取って、書画カメラに大写しにして、話すスピードに合わせてスクロールしていました。その間、書記官としての仕事はないのでしょうか。


論告
被告人は外形的な事実は認めるが、その行為は金銭の返還、性行為動画の削除のためと弁解し、恋愛感情の充足のためや、それが満たされない怨恨の感情のためではないと主張している。
しかし、そうでないことは明らか。

争わない事実関係
被告人はAと配信アプリで知り合い、肉体関係となる。被告人には当時同棲相手がいたが、Aに言われて解消し、同棲することになる。
同棲開始後、リボの約57万円を肩代わりし、Aの娘のプレゼント代として3万円を払う。
後日、口論の上、被告人はA宅を出て行き、翌日私物などを取りにA宅へ。そこで50万円の返済と書かれた返済書と1万円を受け取る。

そして、それ以降SNSを通じてA(被害者)に対して、「乞食なんだから礼を言え」「地獄に落ちろ、チンピラクソ野郎」「復讐代行業って本当にあるのかな」などと投稿した。
また、「債権債務お願いします」「騙された、悔しい」などのメッセージをAに直接送り、「全てウソ」、「償え」、「御社にお願いしたいのはAの解雇」、「性欲モンスター」、「鬼退治」などの紙片などをA宅やAの勤務先に送った。

以上のことから、恋愛感情の充足目的は明らか。結婚の話が出るなど、同棲間に恋愛感情があったのは明らか。
同棲解消間もない時期にtwitterで「結婚詐欺」など多数の書き込みをし、紙面は強度の誹謗中傷である。交際解消による恨みと考えるべき。

確かに金銭のこともツイートしているが、ただ51万円の返済を受けており、解決がなされていると考えることができる。
仮に解決されていないとしても、「なんで、こんなチンピラクソ野郎に騙されたんだろう」というメッセージや、恨みや勤務先の解雇の紙片など、金銭以外の内容が大半を占めており、9万円の返還を求める行動としては過剰である。また紙片には性行為動画の削除といった文言は一切書かれていない

被告人の供述からも、動機として、交際以前は好意を抱いていたが、交際中から支出目的で悔しいなどという心情が明らかになっている。仮に内心として、金銭の返還や動画の削除が目的であったとしても、怨恨の感情と並行していると考えられることである。

情状として、連続して短期間に多数回送っており、Aに与えた恐怖は十分。平穏な生活を害された思いで処罰感情を有するのも当然。身勝手で、一方的な犯行動機に汲むべき点はない。

求刑 懲役6月

過去記事でも、恋愛感情の充足、もしくは充足の感情が満たされなかったことによる怨恨の感情という主張がどうなのか、という指摘をしてきました。

個人的には、暴力などあるとしつつ同棲の解消まで住み続けたり、無関係の子のためにお金を送ったり、引っ越しを待って問題解決を待つような点でああるのに、同棲以降は恋愛感情がなくなったという被告人の主張は、かなり首をかしげる思いなのです。

なので、恋愛関係の充足が満たされなかったことによる怨恨の感情という主張そのものは、「そうかもな」とは思うのです。でも、「そうかもな」という曖昧な感想を超えてこないという気持ちが正直なところで。

確かに、金銭目的や動画削除目的の行動としては、不可解とも思える行動が多いので、検察さんの指摘、特に「怨恨と並行しうる」というのも説得力があったと思います。


しかし、それ以上にAの証人尋問での姿勢などが理解できなすぎて、恋愛感情の充足できずでなく、単に恨みという感覚を強く法廷には残してしまったのかなと思っています。裁判官も、Aの行動にはだいぶ疑問を呈していましたし。

個人的には、論告の中で「Aの証言は信用できます」的な言葉が1ミリも無かったところにも、その辺の検察さんの苦労を勝手に感じたり。


という訳で、判決を残しますが、検察さんも長期に渡る審理、そして論告とお疲れ様でした!!



と思いきや、休めないのがこの裁判な訳で。


論告への意義と弁論準備

さて、弁護人の弁論かと思ったら、弁護人が検察官の論告に異議を出しました。

メッセージの大半が誹謗中傷というのはそう思う。
でも、ストーカー規制法違反というのは、恨みだけでは成り立たない。恋愛感情の充足目的か、それが満たされなかった怨恨の目的であって、それを論じるものになっていない。むしろ私を助ける内容。
金銭問題が解消されたともとれるというが、不合理なのは各証言からも明らかで、証人が信用できないのは明らか。
Aに騙されたことのへの恨みという表現もあった。

(ここで裁判官が、検察官に意見を述べる場ではないと止める。しかし弁論の一貫として弁護人継続)

急に最後になって迷惑防止条例に訴因変更するようなことはしないですよね?
※大阪府迷惑防止条例違反、第十条にストーカー規制法以外としての恨みの感情等によるつきまとい行為を禁止する条例がある

検察官「しません」

裁判官も不意打ちで、迷惑防止条例違反の認定をしませんよね

裁判官「しないから、ほら、この点の発言を禁止しますから」

弁護人は不意打ちを禁じていますが、むしろ僕が不意打ちを喰らった気分でした。僕に傍聴メモを休む暇を与えません。


さて、ようやくかと思ったのですが、さらに一悶着。

弁護人は自身のパソコンをモニターに繋いで大画面に主張を映していましたが、弁論の際は少し歩いたりしながら弁論をしたい模様。
パワポとかでないので、遠隔でポチッと次のページに行くのでなく、下にスクロールさせながらお話ししたい様子。

なので、先ほど検察官の論告を手伝ったように、書記官さんに操作を依頼。書記官も立ち上がって近付こうとしたのですが、裁判官が制止。

弁「どうしてですか、僕のパソコンは触ってもらっていいですよ」
裁「〇〇〇〇(メモ不足)」

弁「検察官のは手伝っていたのに」
裁「あれは裁判所の書画カメラを使用するから、裁判所も手伝いました

弁「えー、それは通らないでしょ」
裁「弁護人が、書画カメラを使ってやるならお手伝いしますよ」

弁護人、プリントアウトしている紙を書画カメラに映してみる

弁「ちょっと見にくいな。どっちがわかりやすいか、アンケート取っていいですか?」
裁「ダメです」

って流れがあり、まさかの被告人が弁護人のPCを触って、弁論の下スクロールを手伝うという見たことない事態に。

手伝わないって理屈はわからなくもないけど、裁判所の持ち物である書画カメラだから手伝っていたってのは、さすがに無理があった気がする…。


やっと最終弁論 ~鬼退治はこれからだ~

ちなみにこの弁護人による最終弁論は、弁護人本人によってnoteに全文公開されています。

私も、公開直後はざっと目を通しましたが、記事作成にあたっては、本当にメモが意味不明な箇所だけ参考にしますが、それ以外は自分のメモを元に書いていきます。

もし全文をお読みになりたい方は、noteで調べてみてください。

同棲までの話
被告人とAが、共通の趣味がきっかけとして、頻繁に会うようになったとき、「借金はないけど、ご飯を抜いている生活」などと聞いており、かわいそうと思い、食事を作ったり、外食に連れて行くなどしていた。

その後、Aからそのとき被告人が同居していた男性と別れて、A宅に来るように言われ、行くことに決める。すると電気代が払えない、リボの負債がある状態と聞かされる。借金がないことを聞かされていたことを指摘するも「リボは借金ではない」と説明される。
家に行った日はAの給料日であったが、すでに逼迫しており余裕がない状態であった。

時系列を辿っていく弁護人。裁判では被告人質問を聞かないとよくわからないことが多いですが、長期に渡っている裁判だと、この論告、弁論を聞いている方がまとまっているので理解できたりもします。

弁護人の立場として、Aに振り回されてきたという主張に着地するのはもちろんなのですが、やはりこの時点で同棲を解消しなかったという点の不可解さは印象に残ってしまいます。
この辺の曖昧さは、Aの証言もそうなので、非常にグレーな部分をお互いに感じるところなのですが。


同棲中
同棲後も食費を負担するようになる。これまでとは違うのが、会う週1くらいの負担だったのが毎日になったこと。その他、靴や洋服も購入することに。
その後、またリボの話になり、電気、水道が止まることを恐れた被告人はリボを全額払う。またAの元嫁に3万円を支払うが、さらに毎月3万円払うという話はさすがに断った。

同棲解消日はAの叔父への訪問予定日だったが、それがなくなる。諸々、叔父が払うという態度や、養育費を払うように求められることに耐えられなくなり家を出ることになる。

Aの支出について
同棲中、被告人のためにAが支出をしたという事実はない。家賃、光熱費と後に言うが、それは一人暮らしでも発生するもので、何も支出したといえるものでない。

同棲解消後にAは被告人に50万円を返済したが、8万は残っているし、同棲期間2ヶ月の食費や服代などの利益を得ていた。
Aの経済は逼迫し続けていて、リボのことを隠していたことなど、金銭目的の交際であると考えるようになった。

なんだか民事みたいな話になってきました。

それに不思議なもので、もはや「Aはアレな感じの人」っていうのを誰も疑わない前提みたいな扱いで、それでも被告人の罪が成立するか否かという話に移って来たのが少し面白いです。
この事案は法律を学ぶ上で結構参考になるのではないでしょうか。


怨恨の感情について
Aに恨みを持っていたのは間違いない。
同棲解消後、59万円の返済を求めたところ光熱費を払うべきと主張され、相殺され50万円とされた。
しかし、Aが光熱費を払っていたのも、被告人が食費を払っていたのもお互いの厚意(好意ではないと強く主張)によるものなので、そこだけを請求するのはおかしい。これは裁判官も追及していたところである。

被告人としては、話が違い過ぎて到底納得できない気持ちだったが、1円も取れないよりはましとして、まずは受け取る。しかし、それ以上の返済について連絡しても、Aは関係ない音楽の話をしたり、回避したりで怨恨の感情を抱くようになる。

被告人に結婚願望はあったのか
同棲前、被告人は生活状況はギリギリと聞いていた。しかし、被告人は知人に対してAのことを「好きは好きですね。彼は人を騙したりしないし」というメッセージを送っている。あくまで同棲前の話。
この証拠が当初、同棲解消後のメッセージと思われるような状況であった。「被告人はストーカー」という偏見を持つことになるので、裁判長には偏見の排除を望む。

そしてこのメッセージからも、被告人はAが騙していないから好意を持っていることがわかる。
なので、検察官が指摘するように、負債の問題が解決していたと考えていたとしても、騙していたという事実は残るわけで、結婚したいという考えになるとは思えない。

裁判官は被告人質問において「Aに結婚する気がないことに腹を立てていたのだとすると、被告人自身は結婚してもいいという考えだったのか」と質問した。
確かにこのような質問になる意図はわかるが、Aが金銭の利用目的である不誠実さ、理不尽過ぎる態度に対して腹を立てていたのだ。

こうして聞くと、裁判官の質問鋭かったんだな。

確かに被告人は「結婚すると言って」、「結婚する気がないくせに」みたいな発言が見受けられました。これは自身がその気なのに、相手がそうでないことに腹を立てているような供述です。しかし、もっとそれ以前として、そもそものAの口のうまさというかズルさというかに腹を立てていたという主張なのですね。

確かに弁護人の主張もわかるけど、ここに関しては少し裁判官の質問の鋭さが勝っているような気がしなくもない。

自身で解決することに固執していたわけではない
検察官は被告人に対して、「弁護士など第三者に相談しなかったのは何故か」という質問をして、被告人は「少額なので」と供述した。その考えは合理的といえる。
しかし、相談したい思いはあった。そして、被告人は本件について警察と話したのち「今日は楽しく2人のお巡りさんと話した。鬼退治はこれからだ。お逝きなさい」とツイートしている。



最終弁論 ~そもそもこの法律は~

さて、ここから主張の本質的な部分に入っていきます。

本件の発端はAの虚偽の被害申告であった
Aは被告人に対し「お金の話好きだね(笑)」というメッセージを送っている通り、金の問題であることをわかっている

しかし、Aは警察に対して「被告人が金を貸していると言っているのは嘘、金を返せと言っているのは交際中の費用のことだと思います」などと説明している。交際時の費用の返還と聞けば警察はストーカー事案として動いてしまう。

Aの証言が信用できない点
Aは法廷でも借金とリボは違うと何度も言っていた。本当にそれを信じている変わり者かとも思うが、公判でAの携帯電話画像を保存しましたが、Aは元妻に対して「カードの負債が膨らんでいる」とも送っており、負債であることを認識していた。
他にも、「毎月の収支は赤字にならない」などと言っているが、それについても変遷している。元妻にも「金はない」、「日々の食費も世話になっている」という人が収支が赤字でないはずがない。

リボの立て替えについて、Aは「結婚するから1万円ずつの返済で大丈夫」などと言っていたが、Aの結婚に関する証言は変遷している。
最初の取調べではAは警察に対して、結婚について触れず「同棲するようになって、口喧嘩をするようになって解消した」としか言ってない。
しかし、後日には「結婚を見据えて同棲していました。被告人も同じ思いで、お互いにメリットがあるので、借金を肩代わりしてもらっていた」と供述。
このようにAは被害者としてアピールしたいときだけ、結婚を考えていたなどといい、負債を立て替えてもらっていたことを正当化しようとしていたにすぎない。Aが被告人も結婚を視野に入れていたという主張は信用ならない。

Aは検察官から本件の原因を聞かれたときに「自分があっさり別れてしまったこと」「結婚しようとしていたのに」などと言って被告人をストーカーと印象付けるよう言ってるが、前述の「お金の話好きだね(笑)」というメッセージをしているなど、原因は金銭のこととわかっているので、信用ならない。

一方で、被告人は、自身に不利益となりうる部分も正直に供述しており信用できる。

確かに、証人の心情のあっちこっちっぷりは気になっていたんですよね。

私の過去の記事より

しかし、このnoteでは、もう「Aは悪い」というのは共通の事実として認定しましたので、あとは罪が成立するかが関心なのです。


と思っていたら、ぴったりの話題に移行します。


ストーカー規制法の確認
ストーカー規制法は、恋愛感情その他好意の感情の充足、またはその感情が満たされないことによる怨恨の感情によるものとされている。

まず、恋愛感情の充足目的でない点
Aは被告人に対して「今も愛しているよ」などと送っているが、被告人はそういうのを送っていない。

次に恋愛感情が満たされないことの怨恨の感情でない点
被告人はAとの同棲が、金目当てであると考えている。このことをストーカー規制法で罰してしまうと、金銭目的の交際を保護することになる。
この法律の21条は、「国民の権利を不当に侵害しないよう留意する」と定めている。本件のようにAの虚偽申告がきっかけと考えると特にその思いを強くする。

本件は交際関係とだけ切り取ったらストーカー事案になるだろうが、全体を見て適切に審理すべきであろう。
もし、今回のような事案がストーカー規制法が適用できないという結論になっても、迷惑防止条例違反において、適用できるので、今回の行為自体を無罪とすることに問題は生じないと考える。

面白いですね。弁論前に、迷惑防止条例違反の不意打ちをしないでというフラグがここで活きてきました。

ちなみに法廷では、両者ともそれはしないと言いましたが、「そうは言っても、やっぱそう思ったんで」と迷惑防止条例として認定したら、何か問題が発生するのか気になるところではあります。いわゆる認定落ちというやつですかね。
私が長らく長文を垂れ流していた、ピーチ事件も傷害で起訴されていたものが、暴行として認定されましたから、その辺のルールが気になるところではあります。


怨恨の感情が増していった点
被告人はAに対して「ギターを売れば返せますよね」「早く払えや」と送っているのに対して、Aは「被告人のこと愛しているよ」などと離しをそらしている。
その後も被告人は「光熱費を抜くのはルール違反」、「頭いいから、被害届出せないよう数百万にしなかった」「生活費入れないくせに「セックスしてやった」だなんて話にならない」などと送っており、お金を取り戻したい意思を示している。
しかし、それでも回避され続けることに怨恨の感情を強めていく。

問題となる文面について
最初の家に投函した文書は「1日でも早く返してください」「着信拒否では解決できません」など貸付金に対することとわかる。

会社に対しても「引っ越し代も病院代もお前だ」などと言われたことを記載し、会社案内や名刺などで人を信用されていることを指摘した。これらも金銭に対する怨恨を表現したものとわかる。

最後の家に送った「不倫セックス」「風俗で酒池肉林」と言う言葉は金銭に関係ないようだが、Aが被告人対して性行為で払っているというような点から来ている。その他にも「金目当て三下」など直接的な金銭問題であることを記載している。

以上のことからも、本件行為が貸付金返済を回避され続けたことによる怨恨の感情で行ったのは明らかであり、被告人は無罪である。

いやぁ、お疲れさまでした。今の僕が自分に言った言葉ですけど。
全部で40~50分でしたかね。非常にわかりよかったです。静かに手を叩いている傍聴人なんかもいましたね。


最後に被告人の最終陳述です

Aは先日の法廷で「自分は所得があって困ってない」とよくわからない主張をしていました。
私に恋愛感情は全くないです。養育費を当然のように請求されるのが訳わからないですし、性交動画で金の無心をされるのが恐かったです。ストーカーと言われても、性交のこととかで脅されているのにという思いだった。
…もっと話さないとダメですか?

裁「なければ別にいいですよ」
被「別に話したいことはなかったけど、裁判長に聞かれたから答えないとと思って」

そして今の点について、弁護人からの補充。

動画のことを弁論で言及しなかったのは、「言った言わない」の論争になってしまうから。動画を消す前に保存をしていなかった検察の落ち度だと思う。

と最後も検察さんをチクリとやることで裁判は終了になりました。


約一年続いた裁判も今週ようやく判決です。
しっかりと判決の時間も取られているので、裁判官も気合の入った判決文を書いてくれることでしょう。

私も最後までしっかり追っていきたいと思います。
判決は、どうかスムーズに始まりますように…

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