入居費用払ったのに家がない?「必要であれば謝る」と供述する被告人の杜撰な犯行 傍聴小景 #101(背任)
当然いい意味ではないのですが、裁判で事件の内容を聞いていて「そんな手口、よくも考えたもんだな」とある種感心に近い感情を抱くことがあります。
組織的な犯罪だったり、特定の業界に精通することで、制度の穴をついてバレにくい状況で行われるようなものです。世の中には、発覚していない犯罪行為というのはどれほどあるものなのでしょうか。
一方で、「そんなのバレるに決まってるのに、よく実行したな…」と思う犯行もあります。
食うに困って、一か八かで最悪刑務所でもいいという場合ならそういうこともあるでしょう。でもそうでもなく、何をどうやっても犯行はすぐにバレるし、犯人は一人しかいない状況なのに、時が全てを解決すると思うのか堂々としている人もたまにいます。
そういう人を見てると、再犯の恐れはもちろんなんですが、もっと根本的な考え方として、社会に出して大丈夫か?と思うこと
はじめに ~会社経営者と言いつつも印象は…~
被告人はスーツをビシッと来た男性。お仕事は会社役員と言っています。どうやら事件時は普通に会社員だったようですが、事件後に自ら事業を立ち上げたようです。
30代で事業立ち上げと聞くと、イケイケのビジネスマンと思われるかもですが、顔はキリリとしているのですが、失礼ながらどこか胡散臭さというか、何か適当なノリでグイグイ来そうだなと勝手に印象を抱いてしまっていました。
背任罪というのは、なかなか聞き馴染みがないかもしれませんが、
「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた(刑法247条)」というもの。
少し分かりにくく、ググっても詐欺罪や横領罪との違いが解説されるなど、法の適用に知識がいるものではありますが、その辺りはこの記事上は本題ではないのでふわっと把握していただければと思います(私が頑張って理解しようとしても、理解できなかっただけとも言う)。
事件の概要(起訴状の要約)
とても珍しい犯行内容です。このAにも、「個人の口座にどうして入れるの?」という気持ちが湧かなくもないですが、非常に書類も多い不動産契約の中の話のことですし、スムーズに進ませるために特に疑問を抱かなかったという風に捉えるとします。
僕は、社会人として諸々の契約書類を交わす立場になってから、個人としての各種契約でもかなり書類を読み込むようになりました。
相手方はサクサクとサインを促してきたりもしますが、記載内容の質問をしても明確に回答できない担当者もいますし、人を疑いたくはないですが、まずは自分の身は自分で守らねばという思いになります。
採用された証拠類 ~履歴書を盗んで追跡を遮断~
一時的にお金が必要だったとしても、引っ越しだなんて、スケジュールがしっかりしているものの費用の振込、振込先がはっきりしているこの行動で、犯行がバレないはずがありません。
また、追って来れないように、履歴書などを盗るというのも、逃げたいためにというのはわかりますが、より自分の首を絞めるような行為です。一応事件化はされていないようなので、これ以上は突っ込みませんが。
正直、社会人としてというか、人としてです、考えや行動が幼稚であり責任感があるとは思えません。
基本的にこのnoteは関係者の名前を明かさずやっていますが、もし実名を公表していて、今の彼の取引先がこの記事にたまたま辿り着いてしまったとき、この人に仕事を任せたいと思うでしょうか。僕は少なくとも「うっ」と一瞬たじろいてしまうことでしょう。
そういう意味で、更生の機会を奪わないために、匿名での発信を行うことに一定以上の意義はあるものと思います。
ただ、今回の被告人がそうとは言いませんが、「仮に事件のこと知ってたら周りも気を付けて新たな犯罪は起こさせなかったのに…」というケースもあるでしょうから、その点はとても難しく感じてしまうのです。
被告人質問 ~謝る気は「必要があれば」~
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