親に相談するのは恐いので、飲食店脅すことにしました(詐欺、窃盗) 傍聴小景#36
働き方について考える機会が増え、テレワークを積極活用したり、副業、フリーランスの道を選択したりとここ数年で、大きく様変わりをしてきました。
一方で、直接的に対面で物を販売する小売店や飲食店については、人件費や従業員の確保など人について考える機会が増えたのではないでしょうか。客から見ても明らかに人が足りていないけど、利益確保のために少ない人件費でなんとか回さないといけなそうなお店など多く見るようになった気がします。こういう状況下で頑張ってる方々にはなんとか報われて欲しいと心から思うので、余計なところで悩みが増えることがなければいいのにと考えさせられる事件です。
はじめに
このコロナの数年において、犯罪数や傾向というのに何か変化というのはあるのか気になるところ。いろいろな事情はある中ですが、「犯罪はダメ絶対」は当たり前として、それに加え、困っている人をさらに狙うようなものはより許せません。
そう考えると、短絡的に動いた結果となりやすい、この窃盗や詐欺なんかは増えているのかなと思ってみたり。
事件の概要(起訴状の内容)
箸がついていないだけで謝りに来させる、箸がなかったせいで子どもらが食べられなかった、だから金を出せ。どれもクソみたいな理論ですが客商売である以上、抗えなかったのでしょうか。こんな無茶を言う人だから、放っておくほうが面倒だと思った可能性もありそうですね。
また、5,000円っていうなんとも絶妙な金額。この種の事案に慣れている印象を受けます。
検察官が提出した供述など証拠類
まぁ同種前科ありますわな。そうでないと、酒飲んでたとはいえ、こんな大胆な犯行できませんよ。さっきも書きましたけど、箸がついていないだけで謝りに来させる、箸がなかったせいで子どもらが食べられなかった、だから金を出せ。やっぱり意味がわかんないですもん。こんなのに絡まれて本当に店長かわいそう。
最初は子ども云々って言ってるのに、作り直すのは拒否して金を要求する時点で、子どもとか関係なく最初から金目当てやんと思われそうではありますが、まぁ払っちゃうものなんですかね。単身居住している被告人になんとか7人前のたこ焼きを届けてもらいたかったものですが。
今回、被告人はそもそも買い物すらしてはいませんが、そもそも事件当日7人前のたこ焼きの販売なんてあったんですかね。店長が店に立ち続けていて、そんな多めの注文が入ってたら記憶に残ってそうなので、もしかしたら被告人の計画も頓挫ということもあったかもですね。
「いやぁ、今日7人前のたこ焼きを買われたお客様はいないのですが」「そんなん関係ないんじゃボケ、金出せや金」とか早々に犯行の真意をゲロってしまいそう。
弁護人が提出した証拠類
弁護側の立証として示談が成立していることや、父の監督についてというのはよくあることではありますが、家計簿というのはどういう趣旨なのでしょうか。あまりない弁護の趣旨なので気になります。
被告人の監督を手伝う妹さんが証人として来ました。
証人尋問
今までとは違うと言いたいのはわかるのですが、
子どもが小さかったから監督できないならそもそも監督すると言うなという話ですし、連絡が取れなくなったというのもそういうのも含めて監督ですし、ご飯に行くことが監督と言われてもなぁとまさかの三戦全敗。
証人が罪を犯したわけではないですし、40代の被告人に家族ある証人に細かい監督まで求めるのが間違ってるとは思うのですが、裁判の場に出廷している以上はね、と思ってしまいます。
家計簿ってそういうことか。
さっきは、ご飯行くくらいじゃあね…って思っちゃってごめんね。支出の中で酒を買ってないかチェックするってことだもんね。相当、細かい作業になりそうだけど、大丈夫ですかね。
同じような心配をしたのでしょうか、検察官からも監督についての質問です。
さっき、そのお父さんの監督のための計画表みたいなの出されてましたけど、大丈夫ですかね。「ちゃんと反省しとるかー?」ってお父さんが細々訪問したら、面倒くさくなってその家からも逃げてしまいそうですが。
この証人、被告人のことを気遣いつつ、父が出しゃばらないにするところまで気を遣わないといけないのだとしたら大分かわいそうに思えてきました。
お金を持ってたらお酒に使っちゃうかもだけど、お金がなくても盗りはしないという信頼を得ている被告人。なんとも不思議な絆で結ばれた家庭環境でありますが、なんとか今後は人に迷惑をかけず再起に向けて頑張っていただきたいところです。
では当の被告人はどうでしょうか。
被告人質問
たこ焼き屋を狙った計画的犯行という言葉に少し面白みを感じてしまったのですが続けます。
過去にもアルコールがきっかけで事件を起こす→病院でアルコール依存を直す治療をする→辛くなって抜け出しお酒を飲み事件を起こす。分かりやすい負のループです。
僕も会社員時代は毎日のように飲んでいて、勝手に依存症かなと思っていたのですが、この生活になったら意外とあっさりお酒を抜くことができました。実際の病気の症状はわからないので勝手なことも言えませんが、1日がっつり裁判を傍聴したら、精神的に疲れるのでその夜はアルコールなどいらずにぐっすりです。お金がなくても1日過ごせて勉強にもなります。
弁護人としては、計画的な犯行ではなく、アルコールが原因のもの。アルコールは飲まないよう証人が管理したりするから、もう再犯の恐れは少ないですと主張したいようです。
続いて検察官から。
親父さんは恐いかもしれませんが、家族に連絡を取れない意思の弱さはあるけど、デタラメ言ってお店の人から金をだまし取る意思の強さはあると。ふーん。
そしてそんな状態でもパチンコには行ってしまうという。生活は苦しいんだろうけど、パチンコ行って、お酒飲んでりゃそりゃそうなるよ。雑誌は酔っててわからんっていうけど、じゃあ潜在的にパチンコに依存しているっていう表れなんじゃないですかね。
もっとこの問題も深く捉えた方がいい気がします。
お金がない、働けない、病気の疑いがある..etcは様々な要因があると思います。
でも、それによって自分に逆らえない人に対して行動しているという、誤った考えを正さないといけないと思います。アルコールが悪い、と本質の問題から目を背けたら、また同じようなことが起こってしまうのではないかと心配になります。
TwitterやYouTubeなどが当たり前になってる昨今、晒される恐れからお店の人というのは接客の過度な部分にも敏感にならざるを得ない状況かなと思っています。僕も発信者として、気に掛ける部分であります。
令和ならではの働き方、AIに変わられない人としての働き方など考えなきゃいけない中で、その人によって足を引っ張られるという苦しい展開。こういう裁判を見ると、接客業をまっとうにしてくれている人には優しく接したくなります。
またこういう足を引っ張る人に限って「おもてなし」とかいうケースが多いのは本当にどうにかならないものなのでしょうか。。。
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