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ニュースで話題の裁判追いかけたらエラい目にあった話(航空法違反、威力業務妨害など) 傍聴小景 #29

今回の記事23,000字だって、笑っちゃうよね。僕の卒論って何文字だったのかな。
今回の記事、新聞の二面近くの分量ですが、私の所感はいつもの記事ほどはなく、ほとんど公判の再現に努めています。ほぼ再現できているのではと思っています。

表現者が受け手の方に制限を課すのは偉そうで良くないとはわかっているのですが、以下の注意書きにも書いていますが、これだけはお願いです。
以降、読み進めるのであれば全文読んでください。一気にじゃなくてもいいです。全てを読んだ上で総合的な意見を持っていただくのに、この記事がお役に立てば幸いです。


お読みいただくにあたってのお願い

・料金記載がありますが、当記事は全文無料でお読みいただけます!
 なぜ料金の表示があるかは、最後まで読んでいただいたらわかります。

【ここ非常に大事】
 検察側、弁護側の主張が出てきます。長いですが両方をご覧ください。
 また、これらはあくまで、主張や証言に過ぎず、実際がどうだったかは
 わかりようがなく、司法上判断するのは裁判所です。

・某有名事件を取り扱いますが、今までを踏襲し名前は出さず
 「被告人」と表現します

・裁判の完全再現は当然無理なので、紹介する内容は頭で要約や
 脳内補完している部分もあるのはご了承ください

・裁判所外、SNSで被告人はこう言ってたけど、みたいなのは
 考慮しません。あくまで裁判内での話をします


裁判概要

日 程:6月22日 10:00~16:30
罪 名:威力業務妨害
    傷害
    航空法違反
    公務執行妨害
    器物損壊
被告人:30代男性
傍聴席:24人(10時開廷時)

簡単に事件の内容をニュース記事などをもとに説明します。

2020年9月に釧路空港発、関西空港行の飛行機に搭乗した被告人。マスクの未着用がもとにトラブルとなった結果、客室乗務員に対する腕を掴んで捻ることで捻挫を負わせた行為(傷害)や、新潟空港への緊急着陸を余儀なくさせたこと(威力業務妨害)をはじめ、数件の疑いがかけられています。
被告人は先の公判においていずれも無罪を主張しています。


この日は6回目の公判。私にとってこの事件、初の傍聴です。

今回の舞台である大阪地裁の201号法廷といえば、よっぽどの大きな裁判でないと開かない法廷。普段、身近な裁判しか傍聴しない僕にとっては縁遠い法廷です。

公判の1回目は傍聴券配布となり定員の約2倍の人が集まり、ニュースの関心の高さを伺わせました。しかし、2回目の公判日の傍聴券配布は定員割れに。まぁ審理になれば難しい話も増えるので、徐々に関心が薄まるのはわかりますが、最初の大まかな事件内容と判決にのみ人が集まるってのも気持ちはわかるのですが、ネットニュースのようにポイントだけ切り取って喜ぶようで、なんだかなぁと思わなくもないです。

開廷の約10分前に法廷のカギが開きました。職員の方によって、携帯電話の電源をオフにするよう、普段より強めのアナウンス。ネットで話題の方ですから、盗撮や録音などに注意をしているのでしょうか。むしろ、ネットで話題だからこそ、盗撮の写真なんて上げたら、速攻で炎上しそうですけどね。

実際のノート B5ルーズリーフ両面びっしり8枚に…

またがっつりメモを頑張る僕にとっては、録音行為なんか見つけた日にゃ、職員さんの代わりに僕が怒ります。

また裁判長より、傍聴人に向けマスク着用のお願いをされました。強制ではなく、お願いでしたね。実際、傍聴席で一人マスクされていない方がいらっしゃいましたが、特にそれ以上のお達しなどはなかったです。被告人はまだ法廷にはいませんでした。

3人の裁判官も着席したのち、主役は遅れてやってくるとばかりに、横の別扉から颯爽と被告人が入廷。もちろんマスクはしていません。入廷時に裁判官に一礼したのち、自席に座ろうとしたのですが、なんか手元にあるパソコンのUSBがどうのこうのと手間取ってる被告人。
君は、航空機だけでなく、裁判も遅らせるのか。


さて、この日は傷害事件の被害者となった、飛行機のチーフパーサーの女性に対する証人尋問。別室でオンラインにて尋問に答える証人。後ろでガタガタと音がしてたんだけど、どこで行っていたのだろう。


証人尋問・チーフパーサー(検察官より 1/2)-搭乗から出発後の対応-

検「この日はあなたの他に誰(CA)が乗っていましたか」
証「私のほかに3人です」

検「当日は濃霧の影響で予定より20分搭乗が遅れたのですか」
証「はい、そうです」

検「搭乗している最中の業務はどういったものがありますか」
証「お客様の出迎え、アナウンスなどを行っています」

検「アナウンスというのはどういうものですか」
証「安全のために乗務員の指示に従っていただかないと
  法に触れる可能性がある
ことなどです」

検「航空法の安全阻害行為について触れたという認識でいいですか」
証「安全のしおりに書かれていることは言っています」

検「コロナウイルスに関するアナウンスはしていましたか」
証「マスク着用のお願いと、もしお持ちでなければお渡しすることを
  アナウンスしています」

まぁまぁ、この辺りはアイスブレイクみたいな感じで。

でも、なんだか飛行機に搭乗したときの様子が頭に浮かびます。確かに「安全を阻害する行為云々」って単語を聞いたことがある気がしてきました。次回からもっとちゃんと聞こうと思います。

検「この日、いつもと違う出来事などはありましたか」
証「後方のCA(今後もこの呼び名で統一)から、
  マスクをしていないお客様がいると報告を受けました」

検「マスクについて会社としての方針はどのようなものなのでしょう」
証「機内ではマスク着用をお願いしています」

検「どう対応しましたか」
証「まず着用のお願いをして、お持ちでない場合に備えて
  お渡しできるよう持たせて、対応に行ってもらいました」

検「その後、どうなりましたか」
証「「つけない」と仰っています、と報告に戻ってきました」

検「それに対してはどうしましたか」
証「つけられない理由があるかもしれないので、確認してもらえますか?
  と指示をしました。体調面でつけられない方もいらっしゃいますので」

検「その後は、どうなりましたか」
証「「つけないです」としか言われないとのことだったので、
  私が代わりに聞くのでとそのCAと交代しました。」

検「それはどこの席の乗客が言っていたのですか?」
証「21Cにお座りのお客様です」

ちなみに公判中の被告人は、紙の資料を見返したり、何か気付いたらパソコンにちょこちょこ打ち込んだりしていますが、多くの時間は裁判所の高そうな椅子にふんぞり返っているような感じ。まぁ声を出して妨害するなどはなくて良かったです。

表情はニヤニヤしていたり、真面目に聞いている感じだったり。こればかりはどういう心境だったかはわかりません。裁判終了までずっと変わらないので、公判中の様子については後述は特にしません。

検「席に行かれてどうされましたか」
証「マスクをつけないと聞いていますが、何か理由はありますか?
  と聞きました」

検「すると、なんと言われましたか」
証「「だから、つけないと言っているでしょ」と言われました」

検「そのときの口調や、声の大きさなどはどうでしたか」
証「少し興奮した様子でしたが、声は大きくなかったです。
  主張が強いという印象でした」

検「マスクをつけない理由は何か言っていましたか」
証「特に仰ってはいただけませんでした」

検「ほかには何か言われましたか」
証「書面を用意しなさいと言われました」

検「なんの書面ですか」
証「特に何も言われていないのでわかりませんでした。行きの
  ジェットスターでも書きましたから、一筆書きます
よと言われました」

ここ以降にも繋がる話ですが、諸々の都合のいい部分だけで大きく物事を解釈して、「ほら、実際はこうだったんだろ!」とか、逆に「この人は違うって言ってるぞ、嘘をつくな!」みたいな場外乱闘は本当にやめてくださいね。せっかくの長文を読む覚悟で来てくれているんですから、頑張って双方の意見を聞いた上で判断する冷静さを持って読んでくれると。
僕自身、被害者に同情しているのは間違いないですけどね。

検「少し話を戻しますが、最初に報告をしたCAから、
  マスクをつけない以外の報告はありましたか」
証「21A(同じ列の窓際)の方と口論になっているようだと」

検「実際、その場ではどうでしたか」
証「21Cの方が気持ち悪いと言われたことに、侮辱罪だと仰ってました」

検「ほかには」
証「周りの方に対して、「見ましたか皆さん」と仰っていました」

検「被告人は何か要求してきましたか」
証「21Aの人に謝罪をさせろと言っていました」

検「ほかには」
証「通路を挟んで、普通に座っていたお客様に対し、
 「ほら、この人鼻をおおってないですよ。CAさん、マスクのつけ方
  教えてあげたらどうですか」
と言っていました」

このとき、機内の何%の方が「お前がそれ言うのかよ」と突っ込みたかったのでしょうか。
残りの方は、恐くてそれどころじゃなかった方でしょう。

検「被告人は21Aの人に対して何かしましたか」
証「指をさしていました」

検「それでどうなりましたか」
証「やめろと21Aのお客様がはらいのけたら、暴力だ!と言っていました」

検「その暴力だと言ったのは」
証「21Cです」

これまで、「21Cのお客様」とか「21Cの方」などと言っていましたが、ここで敬称がとられ、「21C」となりました。証人の強い思いを感じました。
ちなみに以降の質問で、呼び名が混在するので表記はすべて「被告人」、「21A」(窓際の人)と敬称略で統一します。。

ちなみに証人は、別室なので話している様子などはわかりませんが、声の様子から幼くは聞こえますが、言葉遣いが丁寧で、さすがCAさんという感じ。ただ、ところどころ事件のことを思い出してのことか、やや声がかすれるというか、震えているようにも感じました。でも頑張って話してくれています。

検「そのとき、機内の様子はいかがでしたか」
証「周りのお客様もなかなか飛行しないことに不安を覚えている様子で、
  また「恐い」とか「警察呼べないの?」などと仰っていました」

検「その後、どうしました」
証「地上係員に連絡をしたところ、座席を移動させて出発してください
  と言われました」

検「誰を移動させるように言われたのですか」
証「被告人です」

検「その提案を伝えたらどうなりましたか」
証「「それもしません」と言っていました」

検「それからどうしましたか」
証「21Aによろしければ、後ろの席が空いていますのでと伝えました」

検「それで21Aは移動したのですか」
証「しました」

検「あなたはその際に何かをしましたか」
証「アームレストを上げて通路に出やすいようしました

証言等から想定する機内の様子ですね。全く、いらない気もしますが、作っちゃったんで見てください。

検「そのあと(アームレストを上げたあと)何かありましたか」
証「被告人に腕を掴まれました

検「被告人は何か言っていましたか」
証「言われなかったです」

検「あなたは腕を掴まれてどうしましたか」
証「言いたい気持ちはありましたが、言えませんでした

検「なぜ言えなかったのですか」
証「ご自身の主張を強くされる方だったので、
 「あなたがアームレストに触ったからでしょ」とか言われそうでしたし、
  なによりお客様の移動が最優先と思いましたので」

検「マスク着用の案内はいつまでしましたか」
証「座席が確定するまでです」

検「マスクをつけないこと自体は問題なのでしょうか?」
証「事情によりつけられない方もいらっしゃいますので、
  つけないこと自体に問題はありません

検「そのとき乗車されていたお客さんが撮影していた動画がネットに
  アップされているのですが、その中で「マスクをつけたら
  出発できます」
と言っているのはご存知ですか」
証「はい。それは、こちらも色々と提案をさせていただいた結果です。
  体調面の配慮、席の移動も提案しましたが聞いてもらえず、
  元はマスクをしていないことが原因なので、特に理由がないので
  あれば、つけてくれれば周りのお客様も安心できますという意味で
  言いました」

検「証人自体はマスクをつけないこと自体は問題ない認識ですか
証「そうです

検「ほかに、このときに言ったことなどありましたか」
証「「つけないと言っているでしょ」と言っていることに対し、
  マスクでなくあなたの行動が問題なんですと伝えました」

検「それを被告人に言ったのですか」
証「はい。飛行機は密室ですので、出発したらお客様の安全を
  確保するためにも、CAの指示に従っていただく必要があります。
  それまで指示に従う様子もなかったので、安全の運行のために」

検「ほかに席を移動した方はいらっしゃいましたか」
証「通路を挟んだお客様もご移動されました」

検「その後、どうなりました」
証「被告人が「早く出発して、僕は早く寝たいんです」というので、
  もう大丈夫かなと思い、出発準備に入りました」

検「通常、ドアを閉めるのは搭乗してから何分くらいかかるのですか」
証「15分くらいです」

検「今回はいかがでしたか」
証「30分くらいです」

それくらいの時間?って思うかもしれませんが、証人にとってはとてつもなく長い時間に感じたでしょうね。証言の端々から、お客様に快適な時間をと思っているのが感じられる証人。忸怩たる思いがあったでしょうね。


検「出発して、ベルトサインが消えたあとは、どういった業務を
  されていましたか」
証「機内監視ということで、全体の様子や飛行機に異常がないかの
  確認です」

検「それで何かありましたか」
証「被告人に呼び止められました」

検「どんなことを言っていましたか」
証「出発前に言っていたことを繰り返し言っていました」

検「それでどうしましたか」
証「周りのお客様も不安に思い、快適に過ごせなくなると考えたので、
  後ろで話を聞きますと案内しました」

検「対応は誰がしましたか」
証「私です」

検「あなた一人だけでしたか」
証「他に2名のCAも来てくれました。普段でしたら、
  「私がこっちやっておきますね」と自分で動いてくれる方たちなので、
  そのときの状況からここを離れられないと思ったのだと思う」

検「後ろのギャレーではどういう状況でしたか」
証「会話が成り立たない状況で、本当に息継ぎする間もなくという
  状況でした」

検「どういうことを言っていたのでしょう」
証「21Aに謝罪をさせろ、どうなっているんだと繰り返し言っていました」

あのCAさんとかが飲み物とか準備してくれる場所のこと、ギャレーっていうんですね。皆さん知っていましたか?いつか、さも当然のごとくギャレーと口に出すタイミングを探りたいと思います。


検「個人に謝らせることなどできるのですか」
証「できません」

検「会社の方針は」
証「お客様同士のトラブルで、一方につくということはありません。
  話が出来る場を作ることしかできません


検「それを被告人には伝えましたか」
証「伝えています」

検「他のCAも、お客に謝罪させますなどと言っていませんか」
証「後で確認し、誰も言っていないと言っていました」

検「後方ギャレーでの被告人の声の大きさはどうでした」
証「どんどん大きくなりました」

検「それは注意しましたか」
証「周りのお客様がいらっしゃいますのでと注意しました」

検「それに対してどう反応しましたか」
証「声が大きいことは謝罪しますと大きい声で言っていました」

検「その後、声は小さくなりましたか」
証「ならなかったです」

検「この離陸後のタイミングで本来すべき業務とはどういうものが
  あるのですか」
証「機内サービスをしたり、体調不良のお客様がいないかの確認、
  飛行機のトラブルにいち早く気付く必要などあります」

検「この状況は機長に伝えているのですか」
証「伝えています」

検「その後、被告人は席に戻ったのですか」
証「このような行為が続くと、機長に報告しますとインターフォンを
  とると、「主張を撤回します」と席に戻りました」

検「それは機長に報告したのですか」
証「しました」

検「具体的にどういった内容を」
証「大声を発せられていること、周りのお客様が不安がっていること
  などです」

検「それに対して機長は」
証「新千歳空港が近いから、このようなことが続くなら新千歳で
  降りてもらいますと、機長の名で伝えるよう
言われました」

と、ここで50分ほど連続していた質問を途中で切り、15分ほどの小休止をとることに。

僕は、ぐーっと伸びてたりしたのですが、その15分の間に、3人ほど法廷内で携帯をいじって注意されていました。さすがに、「それはしません」とか言う猛者がいなくて、ほっと一安心。でも、ルールは守りましょうね。



証人尋問・チーフパーサー(検察官より 2/2)-警告書、命令書の発令と傷害行為-


検「機長の指示(場合により新千歳で降ろす)は被告人に伝えましたか」
証「伝えました」

検「それにはどんな反応でした」
証「それもしませんと言っていました」

検「可能性がありますという話ですよね」
証「このまま続けるようならと」

検「そう伝えましたか?」
証「機長に、その通り伝えてと言われましたので」

検「それはどこで伝えましたか」
証「確か座席に戻ったあと、私が21Cに行ったと思います」

検「このあと、後方ギャレーでやりとりしたことは」
証「明確には覚えていません」

検「そのあと、被告人からは何かありましたか」
証「前へ向かおうと被告人の横の通路を過ぎたときに、
  CAさんと呼び止められましたが、なにかまた主張しそうでしたし、
  業務も止まっている状態だったのでお待ちくださいと言って、
  前へ行きました」

検「そこからどうなりました」
証「被告人が後ろから前の方へ歩いてきて、
  「あなたの対応は間違っている」と」

検「この対応というのは具体的になにか言っていましたか」
証「新千歳で降りていただきますということに対し、
  職権乱用だと仰ってました」

検「声の大きさは」
証「基本的にヒートアップしているので大きかったです」

検「距離はどれくらいでしたか」
証「だんだん近づいてきて20~30cmくらいに感じました」

検「どんな気分でしたか」
証「普通の人との会話の距離ではないですし、飛沫が飛んでいるのも
  見えたので気分はよくなかったです」

検「その前のギャレーで声の大きさは注意しましたか」
証「しましたが、「私は耳が悪いので声が大きくなるんです」と言って
  いました」

検「それを聞いてどう思いますか」
証「そんな申告もなかったですし、別のお客様の小さな声も
  聞こえていたので..」

検「前方ギャレーでのやり取りは機長に報告しましたか」
証「しました。前方に来て、自身の主張をしていますと」

検「それに対し機長は」
証「もうわかってるし、聞こえているよと言いました。」

検「何か指示はありましたか」
証「警告書と命令書を発行してくださいと言われました」

検「それはあなた一人で準備したのですか」
証「前方のCAと後方のCAで3人です」

この警告書、命令書っていうのがどういうときに出されるか、どういう効力を持つかって深掘りの質問が欲しかったのですが、残念ですがあまりありませんでした。後の弁護人との質問のやり取りにも関わる大事な箇所なんですけどね。

検「警告書には準備が必要ですか」
証「いえ、すでにラミネートされているものなので」

検「一人で被告人のもとへ行ったのですか」
証「複数対応が必要なので、二人で行きました」

検「これらはどのように執行するのですか」
証「警告書は読み上げることで執行となり、このようなことを
  続けないように伝えます。命令書は手渡しをします。同時に行うこと
  など通常ではありえないため、順番は覚えていません」

検「それに対し、被告人は」
証「「何のことでですか?」と興奮して、お怒りになっている様子でした」

検「警告書は全て読むのですか」
証「はい、そうです」

検「読んでいる最中、被告人は」
証「貸し出したペン(後述。この時点では説明なし)で、
  「こんなものを」とペンで叩いてきました」

検「被告人と証人の位置関係は」
証「被告人は21Cに座り、私は通路側のやや前に建っています」

検「叩かれて紙はどうなりましたか」
証「曲がったりして読みにくかったです」

検「最後まで読みましたか」
証「読みました」

検「命令書は手渡ししたのですか」
証「渡そうとしたのですが、「こんなもの受け取らない」と
  くしゃくしゃにして投げ捨てました」

検「その内容の説明はしましたか」
証「特にしていませんが、最初の段階からお伝えしているので」

検「乗務員の職務を妨害していると言いましたか」
証「前方のギャレーでは言ったか、この座席で言ったかは明確には
  覚えていない」

検「被告人が丸めて捨てた紙は」
証「別のCAが拾ってくれてたので、これはシートポケットに入れても
  有効になるので、入れようとしました」

検「証人の体勢は」
証「中腰か、しゃがんでいたと思います」

検「手はどうでしたか」
証「右手でポケットを開きながら、左手で入れようとしました」

検「すると被告人はどうしましたか」
証「すぐに、腕を掴んで、そうはさせないとひねられました

検「どちらの腕ですか」
証「左腕です」

さて、傷害の箇所の核心だ、というところなのですがお詫びです。

ここから別室にいる証人が、掴まれた箇所や実際の動きについて「このあたりです」といった表現が増えたため、大事なところですが記載内容は正確ではないと思います。

検察官は二頭筋、三頭筋だと言葉で説明してくれたのですが、それは僕の中で「二頭筋ってどこだっけ?」となっている最中に話が進み、メモが追い付いていません。傍聴人には筋肉の知識も必要です。


検「掴んだのはどのあたり」
証「時計をつけてたこのあたりです」

検「ひねられたとは」
証「中に入れようとするのは、絶対に入れさせないよう逆に
  力を入れさせる感じです。そのまま入れようとしましたが、
  手の甲から腕がバンっとひっくり返されました」

検「手の甲が下を向くようにひねられたわけですね」
証「それで、アームレストに当たりました」

-その他、不鮮明箇所がありますが、後の尋問も含め争点でないと判断し割愛-

検「それであなたはどう対応しましたか」
証「あなたのしていることは暴力ですよと伝えました。
  近くのCAにも見ましたよねと聞きました」

検「被告人はどんな反応でしたか」
証「何が暴力だと、さらに興奮した様子でした」

検「機長には報告しましたか」
証「腕を掴んで捻られましたと伝えました」

検「機長はなんと言いましたか」
証「その時は、わかりましたと言って、切れました」

検「そのあと、どうなりました」
証「すぐに着陸前の合図が出ました。関空にしては、
  とても早かったので驚きましたが、着陸に向けた動きをしました」

検「そうしたら新潟に降りたと」
証「はい」

検「着陸したとき、どう思いましたか」
証「被告人につきっきりで、何も業務ができなかったという思いでした」

多分、検察官が聞きたかった意図とは違うのですが、思わず出た言葉に証人の人間性が出ています。ほかにもお客様が不安がっていることを辛く思っている節に、この証人の仕事への意識が見れた気がします。

検「新潟空港に着陸後、被告人はすぐに降りたのですか」
証「降りませんでした。地上係員と警察の方が説得して降りられました」

検「その後、どうなりました」
証「一度戻ってきました」

検「それで、あなたはどうしましたか」
証「一度降りた方は、セキュリティの関係でお乗りいただけないんですと
  言ったのですが、身体を乗り出して入ろうとしたので、
  手で押さえました」

検「被告人はどうしましたか」
証「今、触りましたよね、暴力ですよねと言ってきました」

30半ばのオジサンが、若いCAさんに体ぐりぐりして、ちょっと体が当たったからって「暴力だ」って騒ぐだなんて、とんだ地獄絵図です。

でも、あくまで証人の証言ですから、事実だとしたらですけどね。
あっ、でも弁護側も後の質問でここ触れてないから、事実だなこりゃ

検「証人は、安全阻害行為について学んでいますか」
証「はい、CAになる前の試験と定期的な訓練などで」

検「今回はその行為にあたると考えますか」
証「他のお客様を混乱させてしまったり、機内の秩序を乱す行為だったと
  思います。大声で話すなどはカテゴリ3にあたります。
  あまりに業務ができないのでそれを伝えても主張を止めないので、
  それはカテゴリ2にあたると判断しました」

検「腕を掴まれたことは」
証「カテゴリ1にあたり、即警告対象です」

検「腕の痛みはありましたか」
証「最初はなかったですが、関空に帰ってから出ました

検「腕を掴まれたから、関空に着くまでにほかに痛みを発症するような
  出来事はありましたか」
証「ありません」

検「病院へは行きましたか」
証「はい」

検「今回の件を経て、何かご自身に変化はありましたか」
証「精神的に辛く、約1年ほどフライトができませんでした

検「日常生活ではいかがでしょう」
証「電車とか、ほかに知らない人が多く乗っている場所が恐くなりました。 
  吐き気がしたり、普通に生活しているだけで、何か嫌なことを
  されるのではと不安な気持ちになりました」

検「被告人にはどんな思いですか」
証「自身でされたことをよく考えて欲しい。どれだけ多くの人に
  迷惑をかけたのか。私も本当は働きたいのに、精神的に追い詰められて
  しまった。よく考えて反省してほしい」

検「被告人のことを許せますか」
証「謝罪をしないと許せません」

検「被告人から謝罪はありましたか」
証「ないです」

ここで、午前中の審理が終了。午後からは弁護側の尋問に移ります。皆さん、冒頭のお約束の通り、弁護側の立証も見てくださいね。

さて、もともとどういう予定であったかは知りませんが、
裁判長より午後の審理は1時5分から始めると伝えられます。証人に対しても「早く終わるためですから」というような言葉をかけられていたので、予定より少し早まったのかもしれません。

裁判長が検察官と弁護人にそれでいいかを確認し、承諾を得たかと思ったのですが、被告人がおもむろに発言。


休憩時間は予定通りにしてください。
移動の時間もありますので。


いったい、どこまで食事を食べに行くつもりなのでしょうか。館山食堂はさすがに無理だぞ?
ちなみにそのときの時間は11時55分。13時5分まで1時間強あります。


どうすんのかなと思ったのですが、裁判長は、「被告人の意見は聞きました。弁護人のご意見は?」と聞いたところで、「1時5分で結構です」とのことなので、再開時間も確定。これには文句を言わず従っていました。

元々予定していた時間から変わったっぽいので、異議を申し立てること自体は悪いとは言いませんが、やっぱ人との同調のために自分の考えを変えられることが嫌いなんでしょうね。

今回の件も、マスクを着用せず自体は問題視されておらず、まぁ周りのお客も煽ったりしたのかなとも思いますが、「なんでそれに従わないといけないんだ」の思いが勝っちゃうんでしょうね。


さて、私は午後に備えてエナジードリンクのみ補給。しっかり食べると眠くなっちゃうかもしれないので。

というのも、午前の検察官尋問は、証人自体が検察から申請しているので、ある程度事前に話もあったのか、スムーズでした。しかし、弁護人からの尋問は、被害者から弁護に有利な証言を引き出さないといけないので、驚いて思わず素というか粗が出るような質問をせざるを得ません。すると、聞き方が回りくどかったり、証人の回答も不鮮明になったりするんで、正直聞いててだらけるような雰囲気にならなくもないのです。


ということで、午後の審理も頑張って傍聴いたしました!

ちなみに弁護側の質問に関しては一見すると、意味が掴みにくいものが多かったので、先ほどの検察からの質問に比べ、私の意見が多くなっています。これはあくまで私見として見ていただけると。


証人尋問・チーフパーサー(弁護人より 1/2)-怒りを抑えられない証人-

弁「今回の機体の座席は全部で30列ということでいいですか」
証「この機はそうです」

弁「21Cというのは後方ということで間違いない」
証「そうです」

弁「機内のエンジン音などの騒音はどれほどのものかという知識は
  CAというのは持っているものなのですか」
証「知識とは?」

弁「一般として80デシベルほどだそうですが」
証「それは、存じ上げませんでした」

弁「機長の方はコロンビアの方と聞きましたが、英語はネイティブ」
証「ネイティブかどうかはわかりませんが、コミュニケーションには支障はありません」

弁「証人は留学のご経験は」
証「ありません。独学です」

アイスブレイクを兼ねながら、しっかり主張を混ぜてくる弁護人。

騒音云々については、CAとしての知識がどうか、機長の話はその後の降機にあたっての判断の不十分さを狙ってのものなのでしょう。さぁ、ここからどう展開しいくのか

弁「その当時、乗客がマスクを拒否した時の決め事は社内で決まって
  ましたか」
証「その段階では社内では決まっていませんでした」

弁「当時、飲み物の提供はコロナということでしていなかったのでは
  ないですか」
証「販売のことですか?

弁「??そうか、機内ではもともと無料でのサービスを
  行っていないんですね。では、販売はどうでしたか」
証「販売は行っていました

決め事云々は、しかるべく対応になってなかったんじゃないかの布石、飲み物については被告人の対応がもとで業務が妨害されたというほどのものでもないということなのでしょう。しかし、これについては思惑が外れたようです。

ただ、このとき被告人の様子を見てみたら、なんか首を必死に横に振っています。されてないよと言わんばかりに。

確かにHPなどを見たら、2020年のコロナが騒がれ始めた当初は機内販売を中止したようです。しかし、調べてみたら、

ピーチからの案内

同年8月の投稿として、機内販売の一部再開とありました。これが全路線なのか、一部の話なのかはわかりませんが、ご参考までに。

乗っていた被告人として、「提供されていないよ」と思うのであれば、それはきっと誰かはわかりませんが、きっと誰かが乗務員の業務が妨害されたということなのかもしれませんね。悪い人もいるもんだ。

弁「事件の日の客室乗務員報告書というのがありますね。
  これは提出したあとご覧になりましたか」
証「いえ、見ていないです」

弁「誰が、どの箇所を書いたのかはわかりますか」
証「いえ、わかりません。4人で話し合って書いたので」

弁「誰かの筆跡かはわかりますか」
証「自分の文字ならわかります」

ここから法廷内の書画カメラで、傍聴席には見えないものの、裁判関係者の手元のモニターと、証人の別室に向かって、手元の資料を映す弁護人。全部で10ページくらい、ところどころに付箋が貼られているのは、「これは証人ですか?」「ここからここまでは私です」と結構長い事やってました。

今、思い出しても何の時間だったんだろう。

弁「ネットに上がっている動画というのは見ましたか」
証「事件の数週間後に見ました。最近は見ていません」

また裁判関係者向けの書画カメラに写真を映し

弁「ここ(写真のどこかを指し)に映っているのがあなたですか」
証「はい」

弁「この位置的に21Aの人が撮ったというのはわかりますか」
証「はい、わかります」

弁「このとき、被告人は冷静に話していましたか」
証「暴言を話すでもなく、大きくもなくでした」

弁「一連の文字起こしなどは見たことありますか」
証「ありません」

ここもよくわからなかったけど、被告人は最初から暴れていないという主張なのか、隣の人はすぐカメラを向けるような人だから喧嘩の原因もそっちだと言いたいのか。これは被告人質問や裁判最後の弁護人の主張を聞くまでわかりそうもありません。

弁「「マスクをつけていただければ」と言った記憶はありますか」
証「あります」

弁「「CAの指示に従ってくれなければ降りてもらいます」とは」
証「はい、あります」

弁「この「CAの指示」というのは、座席を移動すること、
  マスクをつけるかということですか」
証「マスクをつけるかは、マスクをつけられない方もいるので」

弁「この場にマスクを持っていったのは」
証「それは私です」

弁「左に持っているの箱はマスク」
証「はい、その通りです」

質問の意図としては、マスクの着用に強制感を出したかったのかなぁ。それと同じことを思ったのか、急に証人がまくしたてます

証「あの動画っていうのは、切り抜かれているんです。
  こちらとしては、座席の提案もしましたが全く聞いてもらえず、
  興奮していらっしゃっいました。機内に不安も漂う中なので、
  せめてマスクをつけていただけたらと思いました。
  「乗務員の指示」というのは、何一つ聞いていただけない状況だと、
  離陸してから本当に危ないのです。とても出発できる状態では
  なかったので」

すごく怒っているという感じではないのですが、そのときの感情が伝わります。

もしかしたら、実際はマスクの着用について被告人は強制感を覚えることもあったかもしれません。でも、この場での証言には、飛行機を無事運行させたいという思いがむしろよく伝わったと思います。

ただ、ちょっとここで熱くなってしまったからなのか、ちょっと百戦錬磨な弁護人にややつつかれます。

弁「証人としては、被告人には降りてもらいたいと思っていたのでは
  ないでしょうか」
証「それは、続けられるようなら安全に出発できないので
  降りてもらいたいと思っています」

弁「機長に降りてもらいたいとは」
証「伝えています」

弁「地上係にも降りてもらいたいとは」
証「伝えています」

ここは時系列などをやや曖昧にした聞き方が上手いというところでしょうか

恐らく証人としては、何度かの被告人のやり取りがあった上で、その行為が続くようならという考えのもとでしょうが、
ここだけ切り抜かれたら、「ちょっとのトラブルで下ろしたいと思っている前提の接客だった」、「降ろしたいことを繰り返し伝えたからの結果に過ぎない」という風に捉えられかねないな、と。まぁ少なくともそういう主張なんじゃないですかね。
まぁその考えを裁判官が採用するかは別の話ですが。

弁「一番最初に揉めてたのを聞いたとき、あなたが後ろに行くまで
  経緯などは知らなかったのではないですか」
証「何度か報告は受けていたいので、その状況なら私がと向かいました」

弁「目視するまで口論していることは知らなくて、行って驚いたのでは」
証「揉めていらっしゃいますと報告は聞いていたので、こういう感じかと」

弁「警察での最初の調書の中に「後から聞いた話だと、
  同じ列の人と口論になっていたそうで、私はそのときは全く知らず
  ビックリしました」とありますが」
証「状況を詳しく知らなかったのは確かです」

弁「被告人と21Aが口論となっているって事情を知らなかったんですか」
証「事情は知らなかったですね」

ここは、恐らく証人に発言に変化があって、証言に信用性が足りない云々みたいなことでしょうが、これくらいなら全然許容範囲でしょう。

だいたい事件直後と、いろんな情報が入る二年後で全く同じ記憶を有していろという方が無理があります。

弁「先ほど検察からの質問に対し、21Aが移動するとき、
  被告人のアームレストを上げて、そのときに腕を掴まれたと
  言いましたかね」
証「はい、そうです」

弁「あげようとしたのはどのアームレストですか」
証「被告人の通路側のです」

弁「この報告書(何かは不明。多分警察作成)によると、
  アームレストはAとB、BとCの間のは上下に稼働したが、Aの窓側、
  Cの通路側のは稼動しなかった
と書いてあるのわかりますか」
証「そう、書いてありますね」

弁「あなた、被告人の左のアームレストを上げた記憶はありますか」
証「その段階での記憶はないが、必要であれば上げると思う」

弁「もしするとしたら、被告人の座席の超えて作業をするのは
  わかりますね」
証「でも、上げるとしたら通路側なので」

良かった、画像の二次利用ができました。こういうことですね。

21Aを移動するために、右のアームレストを上げたという証人。しかし弁護人が持っている何かしらの書類には右のは上がらず、左のは上がると書いている。左を上げるには座っている被告人の体の前を通過するようにしなければならない。

きっと、そのときぶつかったので、被告人は怒ったのだ。こういうシナリオですかね。確かに言いたいことはわかります。さぁ、どうする。

と思ったら、あっさり解決します

証「この書類がなんのことかわかりませんけど、右のアームレストは
  普通のお客様では上げられないのですが、CAには上げられる
  ボタンがあります
ので」

弁「警察の取り調べで、アームレストの上げ下げは言っていないのでは
  ないですか」
証「聞かれたことには答えているので、聞かれなかったのでは」

弁「ここで腕を掴まれなかったことも書いていませんが」
証「聞かれたら答えているのと、そのときは逃げれたので、
  そんな大きな問題とも思っていなかった」

これは回避ですね。さすがに聞かれてもいないのに、警察で意気揚々とアームレストについて語り出すとも思えないですし。

弁「離陸後、被告人に呼び止められたのはどれくらいですか」
証「横を通りかかるたびにご自身の主張をされていました」

弁「コールで呼び寄せるでなく、通るたびにということでしょうか」
証「そうです」

弁「証人が後方のギャレーへという呼びかけには素直に応じましたか」
証「話したいことがあるので、わかりましたと言っていたと思います」

弁「このギャレーは客室から見えないところにあるのですか」
証「CAは中にいたので、客席からは見えませんが、被告人は
  通路側に立っていたので見えたと思います」

これは密室でCAから一方的な圧力を受けたとかいう主張をしようとしたのかな。通路側に立っているというのがすんなり出たのは、そういう指示が徹底されているのかもね、想像だけど。

弁「被告人の話す口調は敬語だったのではないですか」
証「そうです」

弁「謝罪させろでなく、謝罪の件はどうなってますかと
  聞いた
のではないですか」
証「そうだと思います。短く表現したのだと思う」

弁「CAが注意すべきでないかという話は」
証「されましたが、先ほど証言した通り、CAはできません」

弁「被告人は質問形式で問いかけてきたのではないですか」
証「質問形式ですが、こちらの答えを聞くとかでなく、
  ずっとどうですか、どうですかと聞いてくるような状態でした」

弁「会社のマスクについての約款を調べてと言われませんでしたか」
証「お願いなのか、義務なのかなどは聞かれた」

弁「それには答えたのですか」
証「機内では調べられないですし、搭乗時の説明時などで
  ご納得の上として出発していますので」

弁「最初に降りてくださいといったとき、根拠を求めてきたのでは
  ないですか」
証「覚えていません。考える暇がないほど質問してきたので」

後半明らかにイラつき気味というか、もういいでしょ感が出てきました。

そりゃあ、大変な目にあって、辛い時期も長く過ごして、この日も休憩を挟むとはいえ6時間くらいの拘束。しかも後半に待っているのは、弁護側の明らかに被告人寄りとわかる質問。それはイラつくのもわかります。でも、もう少しだから頑張って。

弁「離陸して、シートベルトサインが消えて、またつきましたね」
証「乱気流の件ですね」

弁「その間、被告人は着席していましたか」
証「はい。私たちも全員しなければなりませんので」

弁「そのときシートベルトをしているかは目視しながらCAは
  着席するのですか」
証「着陸時は目視ですが、サイン点灯時は声かけなり、
  アナウンスのみです」

弁「その業務が妨害されることはありましたか」
証「それはないです」

弁「機長から新千歳で降りるかという話になったとのことですが、
  釧路から新千歳ってそんな時間経っていないですよね」
証「時間が早いかどうかはわかりません」

弁「13時13分 空港を出発
  13時29分 ベルトサインが消灯
  13時51分 乱気流の影響でベルトサインが点灯
   新千歳に降りるかという話は、この29分~51分の前か
   真ん中くらいか、後かどうですか」
証「ちょっとわかりません」

弁「それにしても、13分に出発してから割に早いですよね」
証「連絡したのはそのタイミングだが、すぐ着陸できるものでもないし、
  機長が判断することなので、私にはわからない」

やはり弁護人としては、被告人が業務をさほど妨害していないのに、証人がいち早く被告人を下ろしたがっていたという風にしたかったんでしょうかね。さすがに緊急サイン時も妨害するような人だったら、何食わぬ顔でネット番組とかに出てるのゾッとしますので、別にそこまでとは疑ってはいないんですがね。

さて、証人尋問も大詰め。傷害行為にいたるタイミングとなる警告書、命令書の発令時の質問です。



証人尋問・チーフパーサー(弁護人より 2/2)-警告書・命令書の発令と傷害行為-

弁「被告人が前方のギャレーに来て、大きな声を出した
  ということでしたね」
証「そうです」

弁「そのとき、メモに書きますという話になったのでは」
証「言いたいを書くのでと別のCAがメモとペンを貸しました」

弁「その後に、機長が警告書、命令書の指示を出したと」
証「前方に来たときに報告して、被告人の声は聞こえているよと
  言っているので」

弁「証人が被告人のもとに警告書、命令書を持っていったとき、
  被告人はメモを書いていたのではないですか

証「書いていましたね」

つまり、サッカーでいうところのファールの瞬間にレッドカード出したんじゃなくて、しばらくしてからじゃないかって主張なのかな。

弁「この××(詳細不明)から出されている、
 「安全阻害行為に対するガイドライン」というのは見ていますか」
証「どれのことですか?」

弁護人、書画カメラにセット
弁「こちらは見たことありますか」
証「こういった書類は見たことがないです

明らかに驚いている弁護側。恐らく、この書類に書かれていることをもとに矛盾などを追求したかったのでしょう。

ここからは、どの書類をもとにした質問なのか、また専門用語など多く、やや内容不明瞭です。

弁「機内迷惑行為と安全阻害行為は違うという研修は受けていませんか」
証「会社のと違う書類に目を通すことはありません」

弁「あなたは今回の被告人の行動を迷惑行為と思っていますか」
証「腕をひねられたことなどは、迷惑行為ではない

弁「ここには、「職務執行が妨げられ機内の安全が・・・」と
  書かれています。また、単にうるさいというだけでなく、
  通路に立ちふさがるであったり、不測の事態に即座に対応できない。
  一時的なものではその行為にあたらないとされていますね

証「そうですね、妨害行為はずっとされていましたので。
  それにそれを踏まえ判断を下したのは機長です」

弁「機長が確認できるのは機内で繋がっているインターフォンと
  カメラですね。CAが的確な情報を伝える必要がありますね」
証「はい、そうです」

弁「CAは機長の判断ができるよう、タイムリーに物事を伝えると
  ありますね」
証「はい、そうです」

弁「今回、席にメモとペンを持っていったのは伝えていないのでは
  ないでしょうか」
証「最初から問題を起こしていましたし、それまでのことを
  判断したのだと思う」

一応、ここを争点の一つにしたいようですね。

まず被告人の行為が長時間拘束させるようなものでなく、一時的なものだと。かつ、メモとペンの件の報告がされていないのであれば、機長は的確な判断を下せなかったということなんですかね。

弁「警告書、命令書を出すタイミングでは静かだったのに、
  出していいのかと思わなかったんですか

証「それは思いました

弁「証人はこれまで警告書、命令書を出したことはありますか」
証「ありません」

弁「命令書の作成もはじめて」
証「はい」

弁「機長とどのカテゴリにあてはまるかという話をしましたか」
証「状況を説明して、カテゴリ2の妨害にあたるので出してくださいと」

命令書を書画カメラに
弁「このチェック欄は空欄箇所があってもいいと指導を受けている」
証「はい」

弁「職務を妨害する行為等かつ安全をおびやかす行為とのことで
  「かつ」なのはわかりますか」
証「わかります。お客様をほったらかしにするなど、
  何かあったときに気が付けない危険な状態でしたので」

弁「ギャレーにマニュアルは置いてありましたか」
証「ギャレーにはないが携帯していました」

弁「中身は確認しましたか」
証「しました。間違ってはいけませんので」

弁「チェック項目の3項にチェックはしたようですが、具体的な行為などに
  ついては記載していないのではないですか」
証「その通りの内容だと思い、チェックを入れました。現場の状況に
  いれば、とてもゆっくり書いている状況ではないとわかって
  もらえると思いますが」

弁「命令書は手交したとのことですが、読み上げる必要は無いと」
証「マニュアルにもそう書いています」

この辺りは、命令書の詳細や航空法の安全阻害行為について理解ができないとコメント難しいですね。ただ、法的に解釈が難しい部分ってことなんだろうなというのは、証人に頑張れって思っている僕でも感じます。

まぁ、弁護士も法的はともかく、そういった迷惑行為、大声での威圧みたいなのが行われたこと自体はさすがに争わないんですね。で、あれば無罪主張じゃなくて情状酌量を求めるほうが心証がいい気はするけど、まぁ当事者としてはそうもいかないのでしょう。

ピーチのマニュアルを書画カメラに
弁「このマニュアルを参照したということで」
証「間違いないです」

弁「この中に、「禁止命令対象行為を伝え」とありますが」
証「伝えています。これ以上迷惑行為をされると、と言っています」

弁「大きな声で繰り返し言うことを止めてください、と伝えていますか」
証「伝えています」

弁「この場では」
証「この時点では言っていません」

弁「交付の段階では言っていないということですね」
証「妨害行為をやめてくださいと言っています」

弁「命令書の内容は対象旅客、周囲の旅客にも聞こえるよう明朗に、
  と書いてあります」
証「私たちのマニュアルを見てください。その前のページに
  書いていますから」

弁護人、特に前のページを参照するなどなく、次の質問へ。
このあたりの聞くとこだけ聞いたらっていう姿勢、別のこの弁護士だけじゃないけど、ここの緊迫感恐~い(/ω\)

弁「命令書を出しに行ったとき、被告人はメモを書いていたのでは」
証「書いていたと思います」

弁「被告人に命令書を手交したときに具体的な行為が書いて
  いないんじゃないか
と言ったのではないですか」
証「職務を妨害する行為ですと伝えています」

弁「どんな行為を示しているのか、命令書の空欄になっていることを
  指摘しているのでは」
証「そこには書いていないが、何度も言っています」

弁「シートポケットに命令書を入れるとき、テーブルを戻したという
  話がないが」
証「それは覚えていない」

弁「被告人にしまうよう頼みましたか」
証「頼んでいません」

弁「証人は、しまいましたか」
証「いえ、しまっていません」

弁「腕を掴まれたとき、先ほど両手で掴んだと言っていますが
 (僕のメモには記載なし)、警察での供述では右手かもしれないと
  言ってませんか」
証「どの記憶が正しいかわからず、動けなかったことから片手では
  無理と思ったのかもしれない」

弁「供述調書では大変多くの供述に協力していただいて、
  詳細に書かれているのですが、その中でこの掴まれた腕の話だけは、
  右手だったか、左手だったか、両手だったか曖昧なんですよ」
証「よく覚えていませんので」

弁「また調書には上腕部という表記がないんですが」
証「病院の診断書を見ていただいたらわかると思います」

弁「新潟空港に着いて、警察にケガは特にないと言ってませんか」
証「覚えていませんが、眼に見える形のものではないという意味
  
だったのでは。」

まぁ、これは関空着いたら痛みが出たって言っているんで矛盾はないですよね。

手を掴まれたのも咄嗟にどっちの手かなんてわからないし、はっきり見てたとも限らないし。漫画家だって、ちょいちょい右手と左手の描写を間違えたりするし。

弁「今回以前にマスクをしていない乗客の対応はありますか」
証「あります」

弁「そのときは乗ってもらったのですか」
証「お声がけして質問に答えていただいたので」

弁「CAのマニュアルに病名までは追及しないと記載があるのは」
証「もちろん知っています」

弁「被告人は、書類を書くと言ったのですよね」
証「そのときは何の書類のことかわからなかった」

弁「プライバシーに配慮した聞き方になっていましたか」
証「(回答不明)」

弁「21Aが席を移動するために、アームレストを上げたときに被告人に
  腕を掴まれたということは機長には言っていませんよね」
証「自分の中で我慢をしました。(なにか理由も言ってましたが、
  メモ不十分)。そんなに強くもなかったし」

弁「急にこの話が出てきた感じなのですが」
証「そういえば、くらいの話なので」

弁「機長と英語で「~~~」みたいなことは言いましたか?」
証「それは言っていませんが「~~~(めっちゃ流暢)」とは
  言いました。今、仰られたのと同じ意味です」

これで、弁護人からの質問終了。休憩挟みつつ、約3時間くらいでしたかね。

確かに弁護人が恐らく主張したいであろう、マニュアルを1~100まで全て100点満点で対応できていたかというと、それは微妙な部分もあるのかもしれません。でも、それはケースバイケースでもあるだろうし、少なくともこの一連の証言の中では大きな矛盾点であったり、職務上の問題行動があるようには到底思えませんでした。


被告人側の視点にも立ってみると、もちろんそんな警告書なんて出されたことないだろうし、どういう効力示されるのがわからない中、空欄箇所などがあったら、不備があって強制的な態度に出られていると思うのは、まぁわからんでもない。

でも譲歩できるのは、ここまでかな。。。


弁護士の質問が終わった後、再度検察官に追加の質問がないかの確認があり、質問機会を要請。


証人尋問・チーフパーサー(検察官より 追加)-搭乗から出発後の対応-


検「先ほど、弁護士からの質問で「命令書を出すときに静かになったので
  ためらった」と言っていましたけど、それはどういうことですか」
証「それをすることで、何かされるのではないかという思いからです」

検「要件を満たしていないから不安になったということではない?
証「いえ、満たしています。ただ、初めてなので、しなくていいように、
  反省した態度を示してくれたらなとは思っていました」

ここの検察官の質問と証人の回答GJでしたね。確かに気になっていました。

要件は微妙だけど、出しちゃえドーン!ってことではなかったことがわかってよかったです。


時間は午後4時。予定は35分までだったので、ちょっと早く終わったのかなと思ったのですが、もう一人証人がいるようです。

ということで、もう少しだけ続きます。



証人尋問・整形外科医(検察官より)

証人は整形外科の専門医で、28年の医療従事者であり、先ほどの証人の診断をした、2年前のことなので詳細は覚えていないとのやりとりをしたのち

カルテを書画カメラで見せながら
検「どういった診断を下しましたか」
証「左前腕捻挫で通院加療2週間

検「加療の起算期は」
証「初診期からです」

検「その判断の過程を教えてください」
証「患者の受傷機転と身体所見から」

検「受傷機転とは」
証「患者の訴えた内容から」

検「具体的には」
証「CAの仕事中、しゃがんでる最中に左前腕を掴まれねじられた」

検「身体所見は」
証「圧痛が認められた」

検「圧痛とは」
証「抑えたときの痛みのこと」

検「これはどうして起きたと思いますか」
証「抵抗したときに痛みが出たのだと思う

検「患者の訴えと、身体所見に矛盾はありましたか
証「ないです

検「なにか薬は出しましたか。」
証「ロキソニンは持っているとのことだったので、
  〇〇というビタミンB錠を」

かなり、医療的な話と、こちらに見えない部分的な話だったので、こちらで理解できなく割愛している部分がある点、どうかご了承ください。


証人尋問・整形外科医(弁護人より)

弁「外見上、腫れなどはありましたか」
証「カルテを見る限り、それはない」

弁「日常生活に支障はないと診断しましたか」
証「カルテを見る限りそう」

弁「本人が痛いと言っていること以外に根拠はありませんか」
証「明らかに骨折はないことは確かだが(何か言っていたがメモ不足)」

弁「左前腕にしびれがある代表例として、末梢神経痛がありますよね」
証「はい」

弁「それに対する処方される薬としてビタミンB錠があると
  聞いていますが」
証「はい」

弁「今回のしびれは、末梢神経障害があると考えたのではないですか
証「それは考えていない

弁「受診2週間以降にその患者は来ましたか」
証「来ていません」

なんとなく、嫌な雰囲気のことを言いたいのはわかります。

これって法的にどっちなんですか?「この診断は正しいです!」って証明と、「この診断は間違ってます」っていうのと。医師がカルテを出している以上、誤ってるって立証できないといけないのではと素人目には映りましたが。

とりあえず、受診のその後に来ないってのは僕は余裕でわかります。仕事で忙しかったら病院なんて行かないし、特に治ったと思ったら行かないでしょう。この行為自体はよくあることで裁判上も済まされるとは思うのですが。


最後にこの証人に一つだけ裁判長から質問がありました。


裁「今回のような症状の場合、受症直後に痛みが出ないことは
  ありえますか」
証「直後に痛みが出ることもあれば、
  その後しばらく経ってからということもあります

その言葉がはっきり聞けて、少なくとも関空に着いてから痛みが出たというのに矛盾がなかったのはわかりましたね。


過去の裁判を見ていないのですが、

検察官から証拠として採用を求めていたこの医師の診断書というのを弁護側は認めていないか、判断を保留していたのようなのですが、
今回の尋問を受けて証拠採用に応じました

これで、裁判所が証人がケガをしたということカルテを見て判断することになりました。


ようやく、この日の予定が終了し、あらかじめ決まっていた次回の日程通りで問題ないかの確認が行われ、裁判は終了しました。

とりあえずこの裁判はもう少し追おうかなと思います。

全体的な所感などはもう少し審理が進むか判決出たあとにでも。




最後に、この記事の最後の段落のみ、有料となっている理由についてです。
有料箇所に書かれているのは「ご購入ありがとうございます」の文字だけです。

正直、この記事を無料にするか、全部有料にするか、一部有料にするか迷いました。
無料にすることで、どのように書いても、それぞれの立場の方から意見を頂戴することになると思ったので、有料にして読者制限をしようかと思いました。ただ、社会的関心がたかいものなので、それもどうかなと。

また一部有料にすることで、無料部分だけで感想を持たれるのも不公平だなと。

最終的に全文無料を決断したのは、ニュースで取り上げられることのみでは被告人に正しくない情報で不利益を与えているなと感じたこと。そしてその一方で、証人の発言を全文公開しても、証人が充分な対応をした上での行為だから問題ないなと思ったからです。


そして最後の最後の箇所だけ有料にした理由は2つです。


これだけ無料でのモノが溢れている中ですが、僕はサービスを受けた上で価値があればお金をオンしたいと思う人間なのです。
ツイッターですら、本当にいい書き込みには10円を払ってでも「いいね」をしたい人間なので。
そういう前提で、この記事がどういう評価に値するのか、またネットコンテンツにお金を出すという意識がどういうものか単純に知りたいのです。


単純に長時間の対応だったので、コーヒー代を奢って欲しいです。そして、もし一定以上のご購入があった場合、今回大変な目に遭われたピーチで航空券を購入しようかなと考えています。

以上2点です。

この有料は全く強制するつもりはなく(本当です)、上記の理由をお読みいただいた上でのご判断に任せます。別に私のほうで誰が読んだかなんてログはとれませんので 笑


というわけで、超長文のご閲覧ありがとうございました。
当たり前のことですが、この記事の全責任は私に帰属します

大人の人生交差点クラブ 普通


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