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証拠点数250点越えのひったくり事案。仕事はサボるけど、犯行は2日に1回ペースで継続(窃盗) 傍聴小景#87
傍聴する裁判がどんなものかって、かなり運によります。
もちろん罪名がわかっているので、どういう類のものかはざっくりとわかるし、被告人がニュースで騒がれているような人なら、さらにイメージが膨らむということもあります。
罪名でどんな類かは分かると言いましたが、どれだけの数や期間で行ったか、どんな酷いことをしたのかは当然わかりません。
でも、なんとなく今回の「窃盗」罪でも、「住居侵入」「器物損壊」なんかも一緒についているのと、「窃盗」罪オンリーとで比べると、「窃盗」罪単独の方が少し軽めなのかなと思ったりするのが、恐らく当然の感情でして。
はじめに ~なぜ住居不定なのか~
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罪名 :窃盗
被告人:20代の男性
傍聴席:平均7人(傍聴した3回)
被告人は少しぽっちゃりした男性。住居は不定のようです。
パッと見た感じ、コミュニケーションが難しそうとも思えないのですが、20代で住居不定とは、かなりの苦労が予想されます。
ただ、住居不定としながら、お仕事はしているようです。なかなかに不思議なスタートでした。
事件の概要(起訴状の要約) ~単純に思う人が多いけど~
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被告人は、歩道を徒歩で通行していた20代の男性に原付で近づき、その男性が持っていた時価35万円相当のバッグなどをひったくった
その名の通り「ひったくり」事案ですね。窃盗の中では比較的ある方だとは思うんですが、最近は特殊詐欺の件数の多さに、やや存在感は薄れ気味な気がします。
ただ、被告人としては単に金目のものを盗れたらくらいかもしれませんが、それを盗られまいと抵抗することでケガを負わせることも当然あるわけで、そうなったら窃盗罪どころの話ではないのです。
採用された証拠類 ~まさかのプロの犯行~
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被告人は結婚をしているが、妻から預かっていた数か月分の家賃を風俗に使ってしまう。それを補填するために友人から借金するが、それも風俗に使ってしまった。
家を出され、妻は実家に帰ったため車中泊することに。しかし、一人では寝坊するので、仕事もまばらになり、遊ぶお金欲しさに犯行を決意する。
知人から原付を借り、軍手、もしくはアルミホイルでナンバープレートを覆いながら犯行を行った。その知人によると、1度ナンバーが外されメットインに入れられていたことがあったとのこと。
被告人は盗んだバッグを質屋に入れて現金化した。
典型的なお金欲しさの犯行で
はあるんですが、だらしなさは相当に上位です。家賃を預かって風俗に使って、その補填のお金すらも風俗に使うというコンボは定番ながらも、ある種神々しさすら感じます。
とは言っても「ひったくり」。
裁判的にそう見るところもないかなと思っていたのですが、初日の裁判はここで終了。被告人にはさらに同様の犯行で起訴される予定があるようなので、裁判が続くことになりました。
裁判官「検察官、追起訴の予定は?」
検察官「今月末に予定しているのですが、それ以降も相当数ある見込みでして終了の目途は現状立っていません」
なかなかにすごい表現です。「相当数」「終了の目途立たず」とは…。
そして結果から言います。この後、被告人には15件(記載済み含めると計16件)の起訴がされました。被害額は現金で50万円以上で、物品としては200万円以上相当額となりました。
全部ひったくりで、犯行は1ヶ月以内に集中、誰もケガなどさせていないので窃盗のみの起訴のようです。
ひったくりのプロ過ぎるよ…。
追起訴審理 ~初公判から約半年かかって~
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