【名古屋】前代未聞の法廷内での傷害事件発生 裁判の秩序崩壊に怒り心頭しつつ、裁判所にも思ったこと #134(公務執行妨害、傷害)
僕は裁判そのものもなんですが、裁判所というのが割と好きなんですよ。
そう言うと、裁判所のあれがダメ、これがダメと仰る方はいますが、別に1から100まで好きだと言っているわけでないんで。
個人的な考えとしては、裁判の秩序が維持されながら、裁判傍聴はもっとその意義が広がってほしいし、裁判所はそれをしっかり打ち出してもらいたいと思っています。そんな思いの僕の目に、衝撃的なニュースが飛び込んできました。
名古屋高等裁判所の刑事裁判中に、被告人と傍聴席にいた被告人の父が拘置所職員に対して胸ぐらを掴むなどの暴行を加えたというもの。
なんとも由々しき事件。
これは名古屋に行かなきゃならんでしょ!
という訳でまたも出張先の傍聴記録です。
はじめに 〜やる気満々の裁判所〜
傍聴できたのは父親のものだけでした。子の事件の公判予定も確認していたのですが、その日はどうしても行けずで。
傍聴席は40席ほどある、結構大きめな法廷。
最前列12席が「指定席」的な名称で確保されていたのですが、2名しか座っていませんでした。報道の方かなと思ったのですが、メモをとっている様子もなかったし、誰だったのだろう。
傍聴席の四隅には裁判所の警備の方。さすがに二度目の暴挙は許すまじと準備万端です。
裁判官はこれくらいの事件としては珍しい3名の合議制。厳粛な裁判手続を維持するため、やる気十分です。
保釈されてる被告人は背は高くないものの、かなり体格がよく、坊主頭でかなりいかつい感じです。一目でなんか強そうと感じさせます。ごついピアスも片耳にだけつけています。
ただ、力があるのは間違いないですが、ガラが悪いという感じでもなかったのが印象的でした。
少しだけ話それますが、出張先で傍聴すると、その後に被告人と遭遇することもないっていう、ちょっとした落ち着きがあるんですよ。別にトラブルになったことはないけど。
でも、今回の被告人の住所聞いてたら「現住所、関西なんかーい」と突っ込みを入れたくなったことだけ加えておきます。
事件の概要(起訴状の要約)
ニュースで捉えていた内容と概ね一緒ではありますが、息子被告人が裁判官の方へ向かったというのは初めて知りました。それを止められたことに息子被告人が激高して、それに父親も乗じた形でしょうか。
これが昭和時代のプロ野球なら、乱闘騒ぎということで、みのもんたのナレーションで楽しみたいところですが、裁判所の中での話です。
確かに私は、法廷で退廷に応じず手錠をかけられた弁護人や、証言台から裁判長に向かって「法壇から降りろ、あなたは人〇しだ」と言った被告人や、刑務官に肩パンを食らわせた被告人も見ていますが(全部当てたら、相当な僕のマニアですね)、この乱闘騒ぎはまたレベルが違う感じがします。
そして思うのは、ミーハー的な意味でなく、その事件現場に居合わせたかったということ。
その状況に対して、関係者はどのような手順でもって対処するのか、そして自分の目の前で起きた事件が裁判ではどういう表現がなされるのか、興味を持つなという方が無理でしょう。
採用された証拠類 〜田舎の祭りの中で起きたような犯行〜
最初ニュースを聞いたときは、仲良しヤンチャ親子が裁判に気に食わず、裁判所で乱闘騒ぎなどと思っていたのですが、親子での顔合わせは拘置所で20年ぶりというのは相当驚きました。確かに名字が違うのは気になっていたところなのですが。
そして、この「助けたろか」という発言ですよね。「助けたろか」じゃないんだよ。
田舎の祭りの喧嘩に加勢するような雰囲気すらも感じるこの一言にクラクラするのですが、この辺りの意図も解明するのでしょうか。
弁護人からは、被告人の雇用主と内縁の妻による、関係継続と監督を行う旨の上申書と被告人の謝罪文が提出され、取調べがなされました。
被告人質問 〜新たなコミュニケーションの形〜
被告人質問が始まりました。
事件の態様だけ聞くと暴れん坊ですが、裁判が始まっての被告人は謙虚というか、背中を丸めて小さくなっている感じです。心から反省してるかは本人しかわかりませんが、少なくとも開き直っているような姿勢は見せていません。
なんとか、言葉を選びながら話している様子はよく伝わりました。
事件のことを振り返るよう言われ、「するべき行動ではなかった。被害者へ申し訳ない。裁判所の関係者に多大な迷惑をかけ、深くお詫び申し上げます」とスタート。
裁判ってどういうイメージだと思いますか?と聞いたら「厳粛」ってのはかなり上位に来るので、その主張はあんまりじゃないの?当たり前でしょ!と思ったのが99%。
しかし、残り1%に僕の中で何か引っかかりを見せたんですよね。その正体が分からぬまま先に進みます。
その後、弁護人から、裁判所の判断や刑務官の取り押さえる行為が正当なものであったと諭され、それに同意する被告人。
そんな中、こんな質問も。
この質問、もう少し被告人に言わせる形にできなかったのかな。
「なんで息子被告人が直接話したいだけなのに、裁判所は聞いてくれないんだー」って思いが募っていた上でなのなら、多少は言い分として聞けるものになると思うのに。
暴れた結果だしなぁと思いつつ、この線で情状酌量を求める形で進めるのかなと思ったら、
思ったより酷い言い分だった。
本当に心配して、許されないけど血も出て苦しむ息子を助けたいという話になるのかと思いきや、コミュニケーションの一種だとは。コミュの取り方は多様ですね。
それに、ずっと親子関係を築いているなら、独特なコミュの方法もあるだろうけど、20年ぶりに会った子に対してこれというのも、また独特な話で。
現在は、内縁と子がいる環境の被告人。今の生活が大事なので、息子被告人のことは気にかけたいけど、今回のような関係性や自身の立場に問題があるようなことがあれば、今後は付き合わないとしました。
検察官からは息子被告人との関係の深さを確認するような質問から始まりました。
息子被告人と一緒に住んでいたのは2歳半まで。なのでいきなり拘置所から手紙が来て驚いたし、面会している人物が本当に息子なのか、お互い半信半疑な時間があったとのこと。
そこから何度か面会し、差し入れもできる範囲でしてあげたとのこと。
元奥さんと別れた経緯などは分からないまでも、22年会わなかったとは言え息子被告人に対して思う気持ちもあったのでしょう。
とは言え、息子被告人も「それくらいできるやろ」とはなかなかの言いっぷりです。あくまで、被告人の口から聞いた話ではありますが。
と思ったとしても、法廷のバーに入ることなんてしないのは、常識中の常識とは思います。
しかし、息子が思いのたけを話したいのに全く話を聞いてくれないのかという憤りはわかります。そこには、弁護人が指摘したような、高裁審理では却下されることが多いなんて事情は知らないでしょうし、そのすれ違いもあったのは想像できるところです。
その後、行ったことで覚えているのは、息子被告人を取り押さえていた腕を引き剥がそうとして、その後その腕を足で踏んだとのこと。起訴状では馬乗り云々とありましたが、そこは結局わからず仕舞い。
そして警察が法廷に入ってきて、一度はバーの外側に戻ったものの、息子被告人が過呼吸で息が苦しそうと感じ、気道の確保を要請。それに応じてもらえないため、またなんとかしようと思って中に入ったとのこと。
このエピソードを紹介したのは、被告人が謝った姿勢を見せたというのはもちろんなんですが、これがなぜ検察官の方から引き出されたのだろうということ。
時間を置いて冷静になるということは、その最中はカッカしていたということ。つまり、カッとなったら何をするかわからない性格ってしたかったのかなぁ。普通に被告人有利の情状を検察官が引き出した印象です。
弁護人は被告人質問では触れませんでしたが、最終弁論では軽く触れてました。
裁判官が見せた不快感と、それを見た私の感想
僕の聞き間違いかもしれないけど、この公判中、法廷の外から「おい!」と怒声のようなのが小さく聞こえました。
またも裁判所内で物騒な事件が起きたのか!?と思ったのですが、法廷の四隅にいる警備の方は反応していなかったので、僕の聞き間違いだったのかもしれません。
しかし、僕以外に「えっ、今何か聞こえなかった?」とキョロキョロしていた人がいました。それが、右陪席(傍聴席から見て左の裁判官)。
僕と「今、何か聞こえたよね」的な目線の会話をしたと思っているのは僕だけではなかったはず。
そんな右陪席からの質問。
経緯に関する質問が多く、暴力行為の問題性への指摘が少なかったので、ここはよくちゃんと聞いてくれたという感じ。
確かにこの行為により息子被告人の逃亡に繋がった可能性もあり、その危険性を被告人自らの口で言及したのは個人的によかった。
その次は裁判長から。これまで聞いてきた内容に近しいのを、怒りっぽく聞き直したりしています。「そんな理由で?」と言いたげな様子が伝わります。
なんというか、ここのやり取りが、僕がこの裁判を絶対すぐに記事にしようと思った箇所でして。
裁判官の言うことは至極ごもっともでございます(ゴマすりすり)!
その現場は見ていませんが、そのときとった対応が真っ当になされたと、僕も裁判でいろんな場面とその対処を見ているので想像できる部分なんです。
そして、被告人が行った行為は甚だ非常識な行為と思います。
でもね、裁判手続きなんて、どれほど一般に知られているものかね。
自分の起こした行為に向き合いたい、意見を言わせて欲しいという被告人に対して、高裁ではめったに採用されないだなんて、普通の人は初めての裁判で納得するかね。
裁判所の怒りはもっともだし、怒るポイントも全くずれていないんだけど、開かれた裁判などと言いながら一般に何を開いているつもりなんだという裁判所が「それは常識です」「タダで済むと思ったのか」と言う言葉の強さに、わからない人へ伝える意識は薄いんだろうなと感じたわけなんです。
今回の事件ってのは、裁判所に何かしらの影響を与えたのだろうか。
被告人の言い分を聞いて、正直被告人に対する思いはあんま変わらなかったけど、裁判所はどう思っているの?と聞いてみたくなる裁判でした。
求刑は懲役1年6月、判決日は私の都合がつかないので、判決を前にこの記事を公開することとしました。
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