M-1が毒舌で優勝できるなら、裁判でキレる人がいるくらいあっていい(窃盗) 傍聴小景#68
相手に配慮した発言、行動ってのが求められる世の中。配慮自体はもちろん悪いことじゃないんですけど、過激だったからこそ面白く映ったものもあります。
その点で考えると、裁判もそれなりに配慮が進んできているなと感じます。15年ほど前の僕が大学生のときは、裁判官は被告人が理解できてなかろうが「あとは弁護人に聞いて」と粛々と進めていましたが、今はそんな人はほぼいないのではないでしょうか(たまにいますが)。
検察官も昔はすごく怒っていた気がします。今は人権を配慮しているのか、法廷での秩序を保とうとしているのか、割と静かなトーンで聞く人が多い気がします。
ちゃんと聞くべきところは聞いているのでいいのですが、いわゆる日本人的な勧善懲悪の役割などを検察官に求めている人にとっては少し物足りないかもしれません。
はじめに 〜人定質問で有罪が確定〜
なんとなく法廷に入ってきたときに嫌な感じがしたんです。
すごくチャラい見た目というわけではないのですが、溢れ出るリア充感とでもいいましょうか。僕の感覚だけでものを言いますと「いけ好かない」。
椅子に大股広げて座って態度もややデカい。喋り方もくちゃくちゃしてる。そして極めつけが
別に聞きたくもない、保釈という名の女の子との同棲情報。これはすでに有罪が確定したというもの。
裁判ライターだとか、推定無罪なんて、なんのその。有罪が決まった以上、不服がある場合は控訴の申立書をお出しください。ぷんぷん。
事件の概要(起訴状の要約) 〜捕まるつもりならいいですが〜
カードを盗む事案というのは特殊詐欺事案を代表として、そこそこにあるのですが、知人のというのはなかなかに珍しい。使ったら履歴がバッチリわかるものなのに、どうして盗むという判断になるのか、なかなかに謎な犯行の一つと思っています。
検察官が提出した証拠類
後の被告人質問も踏まえて説明すると、被害者は大阪の現場情報なんかを掴んでる人っぽい。それで各方面に作業員を派遣すると。
被告人は地元では仕事がないのでわざわざ大阪まで来て、その人を頼ろうと思ったそうなのですが、カバンを盗ってしまったようです。「キングオブお前は何しに来たんだ」を授与します。
その後、弁護側からの提出証拠として、被告人が現在務めている会社の社長が、有罪でも雇用の継続を約束していること、保釈金を立て替えたことなどを証明しました。
証人はいないので被告人質問。この人に、保釈金の立て替えなど、どうしてそこまでサポートする気になったのかを見せていただきたいところです。
被告人質問 〜目の前にバッグがあったので盗りました〜
まず犯行が計画的でなく、突発的なものであったことを聞いてきます。途中、雑に書いていますが、きちんと一問一答で聞いていましたので、とあらかじめ補足。
すごく自然に「盗りました」と仰っていますが、そんな「誰もいなかったから帰った」みたいなテンションで言われても...。
「目の前にバッグがあったから盗る」というのは十分異常行動ではあるのですが、上記の質問に照らすと、
といったような立証にもなりうるのです。とても信じられない話ではありますが。
その後も、家は2階建てだが1階の玄関までしか行ってない(玄関先にパッとあったのを盗っただけ)、カバンの中身は見ていない(突発的な犯行で金目のものを目指していたわけではない)などの主張を次々と展開。
弁護側の主張としては、十分すぎると思われる中、最後の主張。
あ、ちゃんと元の目的のこと覚えていたんだ。この人、盗みに来たのかと思ってた。
それにしても気になるのは、やたら主張する「偽物」という言葉。
これなんですが、今回の裁判としてはクレジットカード1枚の事実についてですが、カバンが盗まれその中に入っていたブランドものの時計を合わせると被害者は120万円ほどだと言っているとのこと。
でも、被告人サイドとしては、別にブランドものじゃないから、そんな大きな被害額ではないですと言いたいわけですね。
とまぁ、見てもらいましたが、ここまでだけなら、裁判でもよくいるレベルのダメな人なんです。正直、記事に採用しない方に心は動きがちでした。
しかし、ここからの展開に筆を動かさずを得ませんでした。
検察官が質問します。皆さん心の中での音量のリミットを外してお読みください。
被告人の話をぶった切って行われる質問に被告人もたじたじ。
ちなみに、裁判所は記録用に裁判の様子を録音しているので、複数の声が被るとどっちが喋ってるから録音でわからなっちゃいます。被告人には質問を聞き終わったあとに答えるようお願いをするのですが、今後は検察官にも被告人の答えが終わってからでないと次の質問に行っちゃダメよと指摘しないといけませんね。
傍聴席で聞いてるだけなのに、おしっこちびるかと思いましたよ。恐ぇ〜。でも、検察官の尋問ってこういうのを想像する人も一定数いるんじゃないですかね?この尋問はビール片手に見たかったなぁ。
実際に偽物だったかは今となってはわかりようがありませんが、確かにこれまでの主張と矛盾が出るんですよね。突発的な行動だけど、ちゃんとそれが正規品か偽かを検討する余地はあったというのはさすがに無理がある。
そして、被告人は相手が悪かった。
いやぁ、白熱したねぇ。
裁判の途中で、これくらいの事件ならいいかと退出しちゃった人は涙目だろうな。
確かに社長が貸してくれるかわからなかったり、すでに借りているのにという気持ちはわかるけど、言いにくいって理由だけだったら、被害者としては「いや、言えよ」って言いたくなるよね。
「お前、問答無用で俺のもの盗んでおいて、なんで今さら体面保とうとしているわけ?」と。
その弁償の交渉用に、わざわざ裁判も予定を大きく空けたんだけど、被害者と判決までに折り合いをつけることはできませんでした…。
そして、当たり前といえばそうなんだけど、最終弁論にて「被害品がブランドものなどであったと証明するものはない」って主張してたなぁ。う〜ん、なんかなぁ。
次はこの弁護士が検察官に怒られてほしい。
判決は懲役1年6月、執行猶予3年でした。
今回の記事は動画にしております。
検察官の迫力は動画の方が伝わるかと思います。良ければこちらも見てくださいね。
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