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動機は密売人の車がかっこいいから!?被告人質問の受け答えで傍聴席の母号泣 傍聴小景 #128(大麻取締法違反)
「普通さんって、大麻嫌いですよね」と言われたことが何人かからあるんです。
聞いてくるあなたは大麻のことが好きな方なのですか?というと、別にそういうことではない。僕が大麻系の被告人に対して厳しい目を持っているという指摘だ。
正直自分にその意識はないし、むしろ違法薬物系の中ではよく傍聴する方だ。ただ、よく傍聴するということは僕にとっては、なにかしらのコンテンツに昇華させようという思いが強いということで。
そう考えると、大麻の被告人は、他の罪名に比べて緊張感が薄いとは感じる。「1回くらい大丈夫でしょ」、「別に体に害悪ないし」、「どうせすぐ辞めれるし」みたいな雰囲気は多く感じるから、その辺の甘さを指摘しやすくはあるかも。
なお、「体に悪くない」と主張する被告人も多々見かけるのですが、大麻使いまくっている人で、喫茶店で泣きながら全裸になっちゃって事件が発覚した人もいるんで、悪くないはずがないと思うんよな。
まぁ、今回はそんな大麻の話。
はじめに ~安易な使用目的の大麻所持かと思ったら~
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罪名 :大麻取締法違反
被告人:20代の男性
傍聴席:平均5人(全3回)
被告人は20代前半の年齢以上に、若さというか幼さを感じる男性。傍聴席では心配そうにご家族が見守っています。
勝手な予想として、知人に誘われ、使うために所持してしまいました。軽い気持ちでやったので、もうしません。母の指導に従います。
的な雰囲気を勝手に予想したのですが、少しだけ事件の事情としては異なりました。
事件の概要(起訴状の要約)
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被告人は知人と共謀の上、営利の目的で大麻を4g所持した。
使用のためでなく、販売目的の所持でした。
もちろん使用のためでもよくないですが、販売目的ではやはり拡散により新たな事件が起こりうるということで、一歩厳しく判断されます。また、興味本位で持っていたという感じより、意欲的な犯行動機とも捉えられるので犯情も悪くなりますよね!
...あれ、俺やっぱ大麻の人嫌いなんかな。
採用された証拠類 ~20代だからわかる大麻との距離感?~
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検察官証拠
事件の経緯
被告人は高校卒業後、バーテンダーなど職業を転々として、今は親戚が経営する建築の仕事をしている。事件当時、母と同居していた。
車の中、着衣の中から発見され、被告人宅からは薬物の重さを図るためと思われる電子秤も押収された。
その他押収された被告人のスマートフォンからは共犯者である知人とのやり取りが残っていて「パソコンを買うために大麻の密売をしよう」と誘っている文言が確認されている。
被告人の供述
動機は作曲のため、パソコン、マイクなどを購入したかった。
50gを一括に入手して、売ろうと考えた。被告人が袋詰をして、共犯者がSNSに投稿をした。職務質問を受けたタイミングは密売の途中だった。
あくまで裁判で聞く情報ですけど、大麻ってグラム5,000〜6,000円と言われているんですよ。ざっくり計算で25万円、大量買いによりちょい値引きがあったとしても20万円はきっとかかっていますよね。
その金でパソコンとか買えばいいのに...
被告人と大麻との繋がりは今後にならないとわかりませんが、軽い気持ちは軽い気持ちなんでしょうけど、そのちょっとしたお金稼ぎの選択肢に大麻の密売が入ってくるのが、僕にはなかなか理解ができません。
それほどまでに、手を出そうと思えばすぐという距離感なのでしょうか。この感覚は、僕みたいな30〜40代より、10〜20代の方が強いのかもしれませんね。
その距離感を知りたいとは僕は1ミリも思いはしませんが、裁く側、弁護する側はこの距離感をどこまで認識しているのかは気になります。
そうでないとなかなか本質的な議論にならないのかなと。
証人尋問 〜被告人の前で怒られる2人の証人〜
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弁護側からは証人が2名請求されました。この弁護人って、呼ぶ証人多いんだよなぁ...。
最初に証言台に立ったのは、被告人の叔父であり、今の被告人の就労先である建築会社の人。証人含め2人の従業員に、被告人1人が追加された形になるので、普段から様子は確かによく見れそうではあります。
働き始めたのは前月からで、まだ仕事を覚える段階なので、現場の掃除やお手伝いの段階だそう。とはいえ、いろいろ積極的に動いているんだとか。
弁「被告人が大麻取締法違反で裁判にかけられていることを知っていて雇っていますか」
証A「そうです」
弁「被告人と大麻の繋がりについてどう思ってますか」
証A「しないのが一番だけど、見れる範囲で注意して見ていきます」
弁「今後関わらせないよう、あなたはどうしますか」
証A「感覚的にですが、本人と話していてもうしないのではないかと思っています」
それがわかるというのはどんな感覚なのでしょうか。
これで質問が終わったんですが、これくらいの意識の人だったらわざわざ証人として呼ばなくてもいいのではなどと思っていたら、やはり検察官も気になったのか強い口調で質問が始まりました。
検「どうしてやらないと感じたのですか」
証A「長年の感覚だったり、本人も反省してるし、監督これからしてくというのもあるし」
検「今回の事件について話をしましたか」
証A「反省しているのでもうしませんと」
検「どうして密売をしたと言ってましたか」
証A「何かを買うお金が欲しかったと」
検「何かってのは聞いてないんですか」
証A「はい」
検「お金について話などはしているんですか」
証A「いいえ」
雇用先の証人に対しての尋問としては結構キツめ。本人の軽い感じを周囲がどう捉えているかというのは確かに気になるところではありました。
正直、雇用先の人がどこまで把握してないといけないかというのは微妙なラインとは思っています。でも、この場に呼ぶのであれば、そういう意識を持っている人でないと不適格だと感じます。
続いて母親が証言台に立ちました。自分の前で結構詰められていたのでどんな思いで待っていたのでしょうか。
現在、被告人は母親と二人暮らしをしているとのこと。その母も仕事をしているので、家を空ける機会は多いとのこと。もちろんそれは仕方ないですね。
弁「被告人をずっと見ていて、悪いと思う部分はありますか」
証B「ふらっと流されやすいので自分の意思をちゃんと持ってほしい」
弁「約2ヶ月勾留されている間、面会などは」
証B「全部で10回くらい行きました」
子の悪い部分も把握し、面会にも足を運ぶなど向き合っている感じる母。
しかし当然ですが、今回の所持のことは知らず。将来的には「真面目に育って欲しい」と答えるに留まり、特に今後どうするかという話にはなりませんでした。
そんな受け答えでは、今回の検察官は納得しません。
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