「お腹が空いたから飲酒運転」「二度としないために寝る!」地方の独特さを感じた裁判の話 #131(道路交通法違反)
愛媛県の今治市に行ってまいりました。
広島県に傍聴の予定があり、その前に1日自由にできる時間があったので、傍聴したことのない愛媛県の裁判所に行きたくなったのです。そんな理由で普通は行かないですよね。普通は広島の裁判所に行きますもんね。
愛媛県の県庁所在地といえば松山市。当然、その松山市に県の中心となる松山地方裁判所があるのですが、その日は裁判が少ないということだったので、運良く裁判が多いことがわかっていた今治市をひとまずの目的地に設定しました。
今治と聞くと、野球ファンなら今治西高校、ゆるキャラ好きならバリィさん、
観光好きの方ならしまなみ海道、産業に詳しい人なら造船、タオル、裁判好きなら松山地裁今治支部などとして比較的有名なものが多いのではないでしょうか。
今治支部の裁判はその日6件、うち3件が道路交通法違反で、1件で過失運転致傷と車社会を思わせる裁判のラインナップ。
しかし、警察庁が発表している、人口10万人あたりの交通事故発生件数というデータがあるのですが、愛媛県は2017年は30位(300件)、2022年は35位(163件)ということでむしろ平均より下でした。優秀優秀。
ちなみにその2年のデータで両方とも1位だったのは静岡県でした。
はじめに ~なんという今治感~
被告人を見た第一印象ですが、ごめん、田舎のヤンキー。かなりごつい体型で、スエットでゆっさゆっさしながら法廷に入ってきました。
そんな被告人のお仕事は造船業。さすが今治…。
事件の概要(起訴状の要約)
飲酒運転の事案です。首都圏でも普通に多い事例ではありますが、普通貨物自動車での事例というのは珍しい気がします。
時間は夜11時です。仕事が遅くなり帰りにいっぱい引っかけたのか、仕事のまま飲み会に行ってそれで帰ってしまったのか、など想像は尽きません。
採用された証拠類 ~都心では聞かない犯行態様~
なんというか、飲酒運転の事案というのは基本自分勝手な内容ばかりなのですが、お腹が空いたからというのはなかなかのレアケース。
しかし書いてて思ったのが、首都圏とまた事情が異なって、ちょっとした買い物、お出かけにも車が必要となると、そういう考えに至りやすいのかなと。家発進で飲酒運転という事案は都心では少ないのです。
あるとしたら深酒していて、朝出勤時には抜けてるだろうと思ったけど、抜けていなかったという事例なのです。
あと車両が普通貨物車というのも恐らく会社のものだったのでしょうね。普段使いも許容されていたのかはわかりませんが、自主退職させられたというのも紐づいてきそうです。
被告人質問 ~「起こしたものは仕方がない」と裁判で言われると~
弁護人からの書証や証人などもなく被告人質問に入ります。サクサク進行で、ここまで5分程度。裁判時間の予定も40分と、東京の60分、大阪の50分などといった新件の基本時間より短いのでサクサク進行も納得できるところ。
まずは、検察官の立証通り、元々家で飲んでて、出先でも飲んで、その後運転するつもりはなかったのに…という話に。
このやりとりだけでは、裁判の一幕とは思わないでしょうね。どうか皆さん、裁判のハードルを下げていただき、是非傍聴へ行きましょう。
再犯防止策:飲んだら家で寝る
なんとも平和なやりとりです。考えたくないですが、同じ過ちを犯してしまった際に「前回、寝るって言ったんですが、眠くなかったんでしてしまいました」という主張がされないことを願うばかりです。
なかなかややこしい人間関係のところで働いていますね。これは労働環境として、問題がないのかこの弁護士さんに追及してもらいたいところですが、この件はうやむやに。
現在では送迎付きの職場に再就職ができたので、免許取り消しになった現在でも仕事はできているとのこと。
質問の最後に、21歳の被告人に対して「現在40歳だと思いますが…」と謎の質問をして、被告人を驚かせたのをはじめ、法廷全体を変な雰囲気にしたのは地方特有のご愛嬌ということにしておきます。どんな間違いなんだ。
続いて検察官。
しゃーないとは言わないですけど、1度やってしまったら止まる環境ではないのかななんて思っちゃいます。地方のさらに郊外なんて行ったら、すれ違う車なんてないから、気を付けていればという気になるのは分かる気がするし、歩くにしては暗い道だし…。
つまりは弁護人が提唱した通り、寝るのが一番ですね!
再犯しない監督環境にないと言いたい検察官にとって、にんまりな回答。
まぁ家族とは言えこういう自分事でない反応するのはまだ仕方ないかなとも思うんですが、たまに起こした自分が「もう過去のことなので」とか「今回起こしてしまったのは、危険性に気付けてむしろよかった」的な被害者をなんだと思ってんねんという発言をする方がいるのは辟易とします。
では、この被告人はどうだったかというと、たぶん考えはいろいろ甘いのかなと思うのですが、それを掘り出すまでもなく質問が終了してしまったので消化不良。
ポイントの詰め方ってのも地域差が出るのかななんて思ったり。まぁ出ないはずもないわなとは思います。
ただ、別にそれ一つを取っていい悪いと言いたいわけではないんです。その地の独特の強みを出してもらえるならそれでいいと思うし、一方でこんだけ情報が収集できる中、都会の取り組みの良き部分はどんどん取り入れて欲しいと思うし。
求刑は懲役8月。当然ながら判決までは追っていません。
というか、これくらいの罪状だったら、即日判決でも良かった気もするんだけど
裁判後の楽しみとして
裁判も終わったので、裁判所近くで評価が高かった白楽天さんに入店。裁判所から3分ほどの距離です。
次の行程があるので、すぐ食べれるよう11時開店の10分くらい前に到着したのに、すでに人がいた!
今治は焼豚玉子飯というのが、ソウルフードとして推しているのだそう。バリィさん推しだから鶏料理かと思いきや、根ざしているのは豚料理という。
周囲もみんな頼んでいた焼豚玉子飯の唐揚げセットの大盛。
見ての通りボリュームがすごかったんだけど、甘辛いタレがご飯を進ませるのであっという間に完食しました。というか、あっという間に食べないと次の予定に間に合わなかったんだけど。
そんなこんなで、そのエリアならではの事件、裁判、そしてグルメを堪能した愛媛旅でした。
「裁判で町おこし!」ってなると、なんか紛争だらけってことでマイナスプロモーションだろうけど、やはり行けば見えてくるその地独特のものというのを感じ取っていき、それによって日本を感じるのが僕なのです。
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毎月約100件の裁判を傍聴している中から、特に印象深かったもの、読者の方に有意義と思われるもの、面白かったものを紹介します。 裁判のことを…
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