「説教でもタダだから許してくれないかなって」 guizillenインタビュー
佐藤佐吉演劇祭実行委員会が、参加団体の魅力を紹介するため稽古中のお忙しい所にインタビューを敢行!第一弾はguizillen(ギジレン)より主宰で脚本・演出の佐藤辰海さんにお話を伺いました!
内田 楽しそうな稽古場ですね!
佐藤 俳優さんは人柄で声をかけています。ぼくは性格が悪いので、客演さんは揉め事おこしそうな人とかは呼ばないようにして、みんなで一緒に作ろうよっていうような雰囲気で愛着を持ってやっています。今回は特に「仲良し」という基準でメンバーを集めました。
ダメでもウケるのってめっちゃ美味しい博打じゃん!
内田 初めてguizillenさんを観るお客さんに向けて、団体の自己紹介をお願いできればと思うのですが…
佐藤 だれか助けてくれーー!!
(劇団員の門田さん、客演の平川さん、小嶋さんが集まってくる。)
佐藤 初めて観る方に向けての自己紹介的なことを言ってほしくてですね…。
門田 自己紹介を助けては無理だって(笑)。
平川 辰海さんの思ったことを言う方がいいよ。
佐藤 これ僕、いままで人に聞かれても上手く言えたためしがない…。
平川 私たちが客演として参加して思ったことと、辰海さんが思ってることが結構違う感じはありますよね。私はギジレンって、ずっとふざけてるけど、最後の方にはなんかわかんないけど感動しちゃう、って感じだと思ってます。
佐藤 自分じゃ恥ずかしくて絶対言えないよ!そんなこと。
平川 大人が本気でバカバカしいことやってるのが、すごい熱くて好きだなって思ってるんだけど、その話をするといつも「おーん」みたいな反応を辰海さんにされます(笑)。
佐藤 大人がバカバカしいことをやっている、というか、残念ながらもう大人だから、やっていることがバカバカしいと思われている、ということでもある(笑)
門田 でもかっこいいことしようとは思ってないから、僕らって。
佐藤 そうだね。
門田 でも、その、何だろうね、こう「元気だぞーー!!!」っていう感じだよね多分。「おーーー!!」って海に向かって叫ぶような青春の…いや青春ではないか。
佐藤 団体の特徴であり、かつ今回の作品の特徴でもあるところで言えば、なんというか華やかじゃないし、褒められた感じじゃない人たちが出てきますね。格好悪さの輝きみたいなものをやっているので、見た人に元気になって欲しいです。あと、上から物を言いたくないなあと思ってます。
小嶋 けんきょ
みんな あーー!
小嶋 謙虚な団体だなって思います。
佐藤 内心では「おら感動しろ!」って思ってるかもよ!
みんな (笑)
門田 それは嘘じゃん!今のは照れ隠しじゃん!
平川 あと、いつも公演がお祭りみたいだなとは思います。
佐藤 って言ってくれることが多いんですけど、よく意味はわかってないです(笑)。なんでお祭りみたいなの?裸だから?
平川 以前に出演した客演さんが、「今回はギジレンに出ないけど、おもろいから観なよ!」って宣伝していたりして、1回出ると好きになる人が多いところとか、出てないけど好きになる人がいたりだとか、とにかく周りの人も巻き込んでるようなイメージがあるなって思います。
佐藤 お祭りっていう感じで言えば、前に王子小劇場で 一ヶ月やらせていただいた時もなんか無謀なことした方が面白いんじゃないかって思っていて。無謀で本当にダメで劇団が潰れてしまったとしても、それを笑ってほしいよねっていうスタンスでした。ダメでもウケるのってめっちゃ美味しい博打じゃん!という気持ちで劇場にお電話して「一ヶ月間どこか空いてないですか?」って聞いたら、年またぎの一ヶ月間なら空いてるって言われて、「じゃあそこ貸してください」ってなりました。
内田 内容より先に一ヶ月間やるっていうことが決まってたんですね。
佐藤 2019 年 12 月にやった公演に結構お客さん来てくれたんですよ。二週間やって 1800 人ぐらい来てくれて。それがプレッシャーで、次はそれを超えなきゃって思い始めて。みんなでどうしようどうしようって会議して。大きな会場は借り方がわかんない、じゃあ、もう長くやるしかない、二週間よりも長い期間って何だ?ってなって、じゃあ 一ヶ月だって!
平川 そんなわけない(笑)
門田 会議の日まで何も決まってなかったんだけど、その日に決まってその日に電話してその日に一ヶ月間劇場を抑えちゃった。
佐藤 劇場さんに言われた「手付金3万円です」が妙に面白くて。一週間借りるのに手付金3万円なのに、一ヶ月借りるのも同じ3万円でいいわけないだろ!って(笑)。今思えば、僕らのめちゃくちゃな我儘をよく許してくれたなと思います。
ギジレンとしてやらなきゃいけなくなった
内田 結成のきっかけを教えてもらえますか?
佐藤 もともと大学で演劇サークルに入っていて、僕と門田のふたりで「卒業しても演劇やろう」って言っていました。卒業後は大学の先輩がやってる団体に入っていたんですけど、作品がちょっと先鋭的というか難解な感じで、僕らは面白いと思っているんだけど、それを面白くお客さんに見せる技術をまだ誰も持ってなくて、お客さんの反応も今一つだったんです。それで結局その団体は活動休止になったんですが、実は活動休止が決まった時、すでにその団体で劇場を取っちゃってたんですよ。
内田 おー!
佐藤 やばい、活動休止になっちゃったけど、劇場を予約しちゃってるからなんかやんなきゃってなって、ギジレンを作ったっていう。
門田 僕らがギジレンとしてやらなきゃいけなくなったみたいな感じですね。
佐藤 大学卒業してから 1、2 年ぐらい、門田が住んでた和室四畳半アパートでスーファミやりながらピザ食べてるだけの生活だったんで演劇的バックボーンは非常に乏しいんです(笑)。でもそれで第 1 回公演をやったら楽しくて、お客さんが笑ってくれるって嬉しいね、楽しいね、が続いてきて今に至ります。
説教でもタダだから許してくれないかなって(笑)
内田 今回の作品「ファンタスティックベイビーズ」について聞かせてもらえますか?
佐藤 笑いの絶えない稽古場なんですけど、作品自体はすっげえ暗い話です。これまで結構コメディー風というか、面白おかしい感じでやってきて、なんかそれもなーというか。あんま残んないなというか。みんな面白かったって言ってくれても、外に出て嫌いな上司からLINEが来たら一瞬で消し飛ぶぐらいの体験だよなぁって…。今回は多少笑えなくても、なんかセリフが長く残るとか、そのシーンがその人にとって、なにか辛いことがあった時とかに思い起こされるというか、立ち直るための支え棒になったらいいなと思いながら作っています。めっちゃ暗い話です。まあ、めっちゃ暗い話でセフィロスの歌、歌わないんですけどね。
(稽古場には、セフィロスの歌『片翼の天使』が響いてます。)
内田 稽古を少し見学させてもらっていると本当に暗い話なんですか!?って思います(笑)。
佐藤 我々なりの暗い話ですね。あと、ちょっと説教臭い感じになった気がします。現代社会で問題になっていることを結構扱っていて、しかも群像劇だから、全体を包むメッセージとか全体のエンディングみたいなのが明確にあるわけではないので、よくわかんない難しい作品だなって思います。だけど、その分ちょっと可愛く見えてきた感じがしますね。手のかかる子供ってかわいいじゃないですか(笑)。とにかく若者に見てほしいなと思っていたら、おじさんの説教くさい部分が出てきちゃったんだと思います。説教でもタダだから許してくれないかなって(笑)
内田 23歳以下は無料ですもんね!
門田 今回の公演でいうと、笑ってほしいとか面白がって欲しいとかもあるけど、どっちかって言うと、お客さんには肩の力を抜いて思ったことをしてほしいなって、思いますね。笑いたければ笑えばいいし、感動してくれたなら嬉しいしみたいな。ただ僕らがやることを見守っててほしい、くらいかな。
佐藤 甘えん坊だからね。
門田 甘えん坊おじさんだから僕ら。誰にも頼り続けてるからさ。
佐藤 誰か代わりに演出してくんねーかなとか、誰か代わりに脚本書いてくれないかなっていうのは常日頃から思ってます。最近 AI が文章を書くじゃないですか?頼りたい。早く代わりに書いて欲しい!AIに仕事を全部奪われたくて仕方ない。
内田 珍しいですね(笑)
内田 創作の最中に煮詰まってしまったとき、突破口をどう開いていますか?
佐藤 みんなに「いい演出ないですか?」って聞きますね(笑)。
前田 辰海さんのほうから聞かれるんですね。
佐藤 役者さんに「いいセリフないですか?」って聞くこともあるし「悩んでます」って口に出しますね。悩んでいることを喋ってるうちに自分の中で解決の糸口が見えたりします。みんなのことチラチラ見て、みんなが「それでいいんじゃないかな」みたいな顔してたら、あ、いけるぞ、と思ったり。
内田 稽古場で全部口にだす感じですね。
佐藤 そうですね、いいスローガンですね、突破口。
稽古で役者さんが笑ってくれるのが、いちばん嬉しい
内田 演劇をやってる中で、好きな瞬間を教えてください。
佐藤 稽古の方が本番より好きかも。なんか本番って責任とプレッシャーがあるじゃないですか(笑)。
みんな (笑)
佐藤 だんだん公演数が増えて長くなるにつれて客席から見るのが辛くなってきて。みんなが舞台上でやってんだから、みんなで共有してる空気とかがあるはずなのに、自分は客席でメモ取ってて。そもそも後ろでメモとってるやつがいるのってなんか嫌だなって、劇場の空気濁してんじゃんって思ってきて、
内田 (笑)
佐藤 それだったら楽屋でゴロゴロしてたほうがいいなって思い始めました。そもそも本番中に仕事を休めなかったりするので、もう本番はみんな頑張れ!っていって、行けたら行くわっていうスタンスです。だから稽古で役者さんが笑ってくれるのが、僕にとってはいちばん嬉しいですね。…もっとかっこいいこと言いたいな。
前田 かっこいいですよ!
佐藤 こういう畑に来るような人ってちょっと尖ってる時期があったと思うんですよ。僕はそれを反省していて。自分が人として褒められる部分よりダメな部分が多い人間だってわかるので、人が笑ってくれると、ちょっと罪滅ぼしできたかなっていう気持ちになりますね。
内田 ありがとうございました!
全身で演出をする佐藤辰海さんと、それを受けてイキイキと動き回る役者さんたち、それを優しい眼差しで見守るスタッフさんの姿が印象的でした。そんなguizillenの『ファンタスティックベイビーズ』は2/21(水)から始まります!
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