第1回ゲスト:奥山樹生さん(企画山 主宰)「自分が一番卑劣なことをしているところから逃れてはいけない」 聞き手:葛生大雅
年始に王子小劇場で開催される『見本市』
活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います
【公演詳細】
「見本市2024」
2024年1月5日(金)〜9日(火)@王子小劇場
みなさん、はじめまして。インタビュアーの葛生です。
みなさんが今回の見本市で、初めてお目にかかる団体の、
お芝居の魔法により染まっていただきたく思い、
「見本市2024」に参加する方へのインタビューをしてきました。
第1回目のゲストは企画山の奥山樹生さんです!
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【ゲストプロフィール】
奥山樹生
https://twitter.com/okuyama_525%e6%9c%97
(企画山 https://twitter.com/kikakuyama)
2000年生。多摩ニュータウンで生まれ育つ。
多摩美術大学大学院に在学中。
現在、地元民話「長池伝説」を講談調で語る活動を始めた。「多摩ニュータウンマン」というご当地ヒーローを仲間と制作中。
最近出演した、かるがも団地「M.O.S.ヤングタウン」も地元が舞台だったので、すごい地元関係に恵まれている。
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「今つくっている瞬間」もすごく大事にする
――稽古ってもう始めているんですか?
奥山:(出演・脚本・演出も兼ねて)一人なので、やりながら書きながらと進めていますが、どうしても詰まっています。
――まだ本番まで2カ月ほどありますからね。
奥山:みんなどんな作品を持ってくるのか気になります。
ほんとに今まで、(自分が)色んな人に頼ってきたんだなというのがひしひしと感じられてきます。どうにもならない時にも、いつも誰かがなんとかしてくれたり。
――そうですよね。他のセクションのありがたさみたいなことを、ひとりでやるとなった時にすごく感じることがありますね。
ーーそれでは、簡単に自己紹介をお願いします。
奥山:企画山は落語や民話を語り継ぐ活動で得た経験と、自分が演劇経験から得たものをほどよく合体させた作品をつくる場として、立ち上げました。
今回が旗揚げなので、特徴はこれからできていくと思うんですが「ものをつくる」「創作する」ということに焦点を当てた作品作りがしたいです。
空間や物語をつくることはもちろん、観客と一緒に場の空気をつくる瞬間もすごく大事にする団体になっていきたいです。
奥山個人としては、現在、多摩美術大学の大学院に在学しております。
好きなものは、映画、演劇や落語はもちろん好きですし、中でも特撮のヒーローやアメコミヒーローが好きです。絵を描くことも好きで、最近は空気階段や真空ジェシカのラジオをよく聴いてます。
――団体のロゴとかかわいいですよね。あれは奥山さんのアイデアなんですか?
奥山:はい。ギリギリまで悩みましたが、「奥山がいつも描いてるようなイラストがいいんじゃない?」と周りの人に意見をもらって、気楽に形にすることが出来ました。
――ロゴの画部分は鳥?
奥山:鳥と決めたわけじゃないんですが、飛ばしてみたら面白いんじゃないかと思い…。つくる時は羽の動きのコマ割りを参考にしたんですが、「羽ってこういうふうに動いているんだ」と感心しました。
――これからやってみたいこととかありますか?
奥山:民話を語り継いでいく中で気になったことを、演劇に変換して形にしてみたい気持ちがあります。
紙芝居を使って、みんながお菓子を食べながら楽しめる気楽な会もできたらなと思っています。
紙芝居版の見本市みたいなのも開けたら楽しいなと思ったり。理想としては、野原でお酒とか飯を食いながら。
今まで躊躇していたものに躊躇しなくなる
奥山:今回の作品は形式上、一人芝居の予定です。
落語であったり、語りと演じることの境を探った作品になるかと思います。気持ち的には「空想や妄想で生み出されたものがどこにいっちゃうのか」と思うようなことを扱いますが、そうしたものを面白がってもらえるかという不安はあります。今回はマクベスのお話をお借りしようと思っています。
そこで、「人の作品をそうやって使うの」とか「その作品に出てきたキャラクターを自由に扱う」ということも「暴力的」なのかもしれないと思うようになって、そういうところも素直に作品に入れていきたいと思っています。
正直文字媒体ではあまり形にはなっていません。「これをこうしたい」という構想はあるのですが、文字にした時に「なんか違うな」ということを繰り返している。ある時に境をぐいーんっと出来ると思いますが、進捗としては20%もいっていない状態です。
「ここ」にあるのになかなか手が届かない。「これをやりたい」というのは出来ているのに、それが具体的な形になっていかないことに悶えています。落語をやる時にはあまり文字にせずに、音で覚えていきます。口ずさんでいくうちに覚えていく。ただ、いざ演劇となると戯曲はむずかしい。
「今まで躊躇していたものに躊躇しなくなる」ということがいつもギリギリのタイミングで訪れたりして、そこでぐいーんっと出来ていくことがあります。
そこを解明して、今回はペースを打破するというのが課題でもあります。
マクベスに怪獣を出してみよう
――今回のインスピレーションの源泉はどんなところですか?
奥山:神田伯山の講談です。「侍と侍の戦い」みたいなものをみんなが楽しむみたいな、今のヒーロー映画みたいな楽しみ方が講談にはあります。
その怪獣版をやってみたいと思ったのが始まりです。そして、マクベスに怪獣を出してみたいというアイデアとなぜかつながっていきました。
アイデアを膨らませていくうちに、マクベス自身が怪獣のように見えてきました。
いうならば、マクベスが自分の意思で王様を殺してからは、マクベス自身も何に突き動かされているのか分からないまま「進むしかない」様子がまるで怪獣のようだな、と。
いざ怪獣が出てきたら、マクベスを別の視点で楽しめるのではないかと思っていましたが、それ自体(演出するにあたって)かなり暴力的かもしれないと思い始めています。人の話を改変する、怪獣を出して暴れさせる。それらは、自分が演じることを楽しむための残虐な行為かもしれないと思い始めていて…さあ、怪獣が暴れて胸熱だ!というのも素直に言えなくなってきました。
「自分自身がマクベスに怪獣を入れることそのもの」という話になってきている感じがあります。
時間的な制約も作品に関わってきながら、そこを作品の中で言及するのか、どこまでメタ的なところに手を伸ばすのか悩んでいます。一人芝居ということもあり、お客さんとしてもメタ的なものを認知しやすいとおもいます。だからこそ僕が演じるだけで受け入れてもらえるのか、受け入れてもらえない時にそこから逃げられない…という不安はあります。
物語全般に言えることかもしれませんが「なんでそれを私たちは見せられないといけないのか」という時に「確かに」と感じてしまいました。
その必然性をどこかに持たせないとこの物語は動き出さないのかもしれないとなった時に、劇中劇にするかなど、最初に自分がやりたかったことと離れてしまうのではないかと感じたりもしています。
今は、自分が怪獣になってしまうという内容になりそうです。
「見本市でどんなものを見れるのか」という気持ちでお客さんも来るとは思いますが、そこに対してプレッシャーも感じたりしています。
笑いが返ってきたのが気持ちよかった
――芝居初め、演劇を始めたきっかけについて教えてください。
奥山:原体験として、演じるということは幼稚園の時が最初でした。
与えられた歌や台詞を全力でやるのがただ楽しかった。その充実感や楽しさというのは変わらず保持し続けている感じがあります。
その前に絵を描いたり、落書きしたり、物を作ったりが好きでしたが、その中で自分の意思で演じているものを見てもらったり、見てもらうものを作ることをすすんでやるようになったきっかけとしては、幼稚園で落語のワークショップがあったことです。
親にやってみればと言われて流されて始めたものでしたが、その経験が自分が演じて、お客さんに見てもらうということを、自分の意思でやり始めたきっかけです。
それから映画を作る小学生向けのワークショップに参加して、物を作ることの楽しさを覚えました。
親が「やってくれば」と言ってくれて、いつの間にかワークショップに行く事になったところから、僕はそれを楽しんでいて、ある時から自分から行ってみたいと思うようになりました。
最初は大人が喜んでくれるのが嬉しい、これをやったら大人が喜んでくれるんだみたいのがあって、それを自分が楽しいと思い始めたのはどこなんだろう……。
やっぱり落語とかだと、笑いが返ってきたのが気持ちよかったのかもしれません。それをもっと味わいたいというか。
多分物心つく前から、映画や落語を観る時に親に連れていってもらったりして、いつの間にか好きになっていきました。
――どういう流れで作品が生まれていくことが多いですか?
奥山:最初から複数人で創作する場合は、他愛ない会話から生まれていきます。
この間、ちっちゃいヒーローショーの台本を書いたんですが、ショーを行う場所にちなんだキャラを出す必要がありました。そういう時は、その場所の名物、好みのキャラクター創作仲間で出し合い、出た意見同士を無理やり合体させたり…。意外と面白いものが急にうまれたりしました。
個人で創作する場合は、何かワクワクするイラストやワードが最初に浮かんできます。
そこから、自分は浮かんできたことの何にワクワクしているのか、具体的にすべくがんばります。脳内の言葉や気持ちを片っ端からホワイトボードに書き出したり、世の作品から形作るためのヒントをもらったりして、少しずつ肉付けていきます。粘土でぼんやりと形作ってから、細部を作る感覚に近いです。
今回もそうですが、ずっと一人でこねくり回してても分からなくなるので、とにかく人に話を聞いてもらって、具体的な意見や励ましをもらって助けてもらうことが多いです。
想像するのがたのしいなとなってくれれば
――お客さんを何で芝居染めしたいですか?
奥山:お客さんの想像力ですかね。
お客さんが無理なく能動的になってもらえる作品を創っていきたいなと思っています。
お客さんがじっとしてぼーっと観ているのだけど、想像するのがたのしいなとなってくれれば。
「舞台上の何かに圧倒された」というよりかは、「ああ。ああいうのが、自分の想像のお陰で見えた気がするわ」みたいなのを味わってもらえたら嬉しいです。
お客さんが受け手で終わったとならないような、内側からの芝居染め体験になったらなと思います。
※次回は明日、ヨルノサンポ団の飯田充さんのインタビュー記事です。次回もまたお会いしましょう!
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