見出し画像

違和感のきっかけは、斉藤さんは「とろろ」、わたしは「うどん」だった。この感覚は持ち続けたいもの

広重「東海道五十三次」の丸子宿「丁子屋」、今もご当地グルメのとろろ汁茶屋です。静岡で育った明大教授の斉藤孝さんは、18歳で上京して食べた「とろろ」の違いに違和感を感じたといいます。

色が白く粘り気がない、自然薯とは別物。よけいに地元のとろろが恋しくなったそうです。今でも思い立ってとろろ汁を食べるためだけに静岡に行くという。

わたしの場合も関西から上京し、立ち食いうどんの「つゆ」に違和感を覚えました。真っ黒くて醤油味しか感じない。そのうち、うどんまで染まってくる。奮発して生卵をいれて味をうすめないと食べれませんでした。これは今も同じです。

しばらく前、帰省して母親の手料理に
「薄くない?」
「変わってへん。変わったのはお前のほうや」
といわれ、びっくりしました。「つゆ」のベースが関東寄りにシフトしているらしい。

斉藤さんはこう言います。
「物事を判断する根っこに身体感覚があり、それは環境や風土、その土地の方言によって形成される」

わたしの場合、こうつけ加えなければなりません。
「しかし、生活環境が変わればベースも元のままではない。大事なのはこれを自覚して、ときどき原点(の味)を確かめることだ」

とろろを食べに帰る斉藤さんも、きっとそうなのでしょうね。