ほらほら、来た来た
「反撃能力」が話題になったのを覚えているだろうか。
岸田政権が国家安全保障戦略(NSS)などを閣議決定したのは2022年12月16日。①相手の領域内を直接攻撃する「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」との名称で保有する、②2023年度から5年間の防衛費を現行計画の1.5倍以上となる43兆円とするという内容だった。メディアがこぞって取り上げたが、最近は話題から遠ざかっている。
直近の話題は、フクシマの処理水放出に対する中国政府などの反対表明、SNSでの風評や、わけのわからない中国からの抗議電話などが主流で、「反撃能力」に触れるメディアはほとんどない。
そんな中、日経新聞に「世界の防衛大手がアジア事業の重心を日本に移す」という記事がでた。
ほらほら、来た来た。
蜜にたかるアリのように。
英国BAEシステムズは、アジアの統括機能を年内にマレーシアから日本法人に移管する。BAEは次期戦闘機の「グローバル戦闘航空プログラム」の中核企業で三菱重工業と連携している。
米国ロッキード・マーチンはシンガポールから日本へ統括を移した。地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)やステルス戦闘機(F35 )を納入している。
ほかにも、米国L3ハリス・テクノロジーズや、仏タレスなど日本法人を設立し、日本企業との提携を強化するという。
43兆円。わかっているだけでも、反撃能力につかう長射程のミサイルに5兆円、部品交換などで9兆円をあてることが決まっている。彼らにとっては大きなビジネスチャンスだ。
ロシアのウクライナ侵攻が現実となった今、中国の台湾侵攻の可能性や、北朝鮮のミサイル(ロケット)リスクをメディアが煽る。サイバー攻撃にそなえるシステム防衛強化、現物のミサイルや弾薬の増産。潤うのは防衛軍需産業にほかならない。
43兆円の予算、防衛費のGDP比2%への倍増。お金の行方は、日本だけでは到底賄いきれない。