現役で亡くなったひとへの思いを、大晦日の新聞レクイエム特集で振り返る
すでに引退している人が亡くなっても、
「そうでしたか」
それに比べ、ご高齢でもまだ現役で活躍されている人には
「えっほんと?」
というおどろきに、残念な思いが加わります。
なぜって?
これからは、新しい「コト」が生じたとき、彼らの見方を聞くことができないし、考えるヒントが得られなくなるからです。
しばらく前ですが、2012年、丸谷才一さん(1925年生まれ)が87歳で亡くなったときは、まだ彼の本を横展開読みしている最中でした。M新聞の書評欄を主宰されていて、人選も彼がおこなっていたといいます。ご自身も書評を掲載されており、毎週それを読むのが楽しみでした。ともすれば横道にそれ、また戻る博識とうんちく、丸谷流の展開には、どのエッセイをとってみてもエンターテインメントがありました。
昨年2019年1月には梅原猛さん(1925年生まれ)が93歳で亡くなりました。
「水底の歌」や「隠された十字架」などで面白さを知りました。史実と現物、独創に満ちた発想と展開、まさに梅原日本学でした。
そして今年8月は、山崎正和さん(1934年生まれ)でした(86歳)。
「柔らかい個人主義」を提唱され、自由主義的保守感覚のぶれない評論はむずかしかったけれど、丸谷才一さんとの対談がよかった。見かた、考え方を知るとともに、楽しく、また奥深いものでした。
このお三方はご高齢にもかかわらず、精力的に仕事をされてました。うらやましいかぎりです。できれば、長くいつまでも現役でいたいものですね。
大晦日は、新聞のこの1年のレクイエム特集で思いをはせます。仕方のないこととはいえ、あたらしく生じる「コト」に対して、現役で亡くなった人の意見が聞けなくなることへの寂しさと残念さをあらためて感じます。