心配の中心は、先に話す
「ちょっと話す時間ある?」
「出かけますけど、少しだけなら大丈夫です」
「じゃあ、帰ってから」
「どんなことですか?」
「大したことじゃないんだけど」
入社7年め、てきぱきと仕事をこなすようになった女性営業Mさん。夕方に時間をとってもらうことにした。
人事評価のフィードバックがおわったばかり。さきほど人事部長がきて「申し訳ない」という。何事かとおもえば、Mさんの賞与計算がまちがっていた、フィードバックは済んだかと聞く。終わっていると答えると、5万円ほど多かったので訂正してくれという。
またか。まちがったのはそっちだから、自分でやれよな。いやなら、そのままにしておけばいいじゃない。
そんな話を彼女に伝えるつもりだったが、長くなったらわるいので夕方にした。それが彼女に迷惑をかけてしまった。
帰ってくるなり、何なんですか?という。目に落ち着きがなく、心配そうにみえる。
さてはとおもんばかって、ひとこと。
「転勤じゃないよ」
「?」
「ちがうよ」
「よかったー!ずうーっと、そのことかとばかり思っていたんです」
「しっかり仕事ができるし、海外もいいんじゃない」
「また、そんなことを言わないでくださいよ!」
5万円のことを話すと
「アハハ!どうでもいいです、そんなこと」
笑い泣きの目でした。
心配の中心を察してそれを先に言う。これがいちばん大事だと感じた日でした。