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#172『あなたに成功をもたらす人生の選択』オグ・マンディーノ

 またオグ・マンディーノ。これまで読んだ二冊はお話の形を取りつつ幸福の秘訣について語り、主人公は著者本人だった。今回も明らかにモデルは著者だが別名の架空の人物となっている。そのため、本の出来としては読み易くなっている。私が禁欲的すぎるからかもしれないが、成功者としてのオグ・マンディーノが一人称で語り出すと、何か臭みがあって嫌なのである。
 本書の主人公はビジネスマンとして成功していたが、ある日、子供と全く時間を共にしていないことに気付く。それで退職して塔に籠り、自己啓発の本を書く。それがとんでもなく売れて一躍有名人になるが、時同じくして謎の手紙が人生の危機を警告する。またまたのオグ・マンディーノが好む手法らしく、最後には幻影・架空・死者と分かる謎の人物である。で、息子の死を予言し、色々あってそれが回避されて終わる。
 と書くと、何じゃそりゃという感じなのだが、実際何じゃそりゃという感じがした。息子の死に関する件が必要だったのかよく分からない。それに死が回避されたことをもって本書の締めとするのも、一体どういう判断に由るものなのか不明である。
 まあ読み易い本ではあるが…先に読んだ二冊に比べると強いメッセージが伝わってくるとは思わない。#144が最も良い。作中内作品としての自己啓発文書への導入が自然で良いし、全編通して人間性に対する信頼や静けさに満ちている。#171はその焼き直しと言った所で、同じく作中内作品の自己啓発文書のインパクトは弱い。本書は更に文書のインパクトが弱い。その代わり割とどうでも良い主人公のサクセスストーリーに紙数が無駄に割かれている。
 とりあえず3冊読んだ現時点で、これでもういいかなという気がする。
 

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