今度こそ第6回 キャリアパスポート

今日は依頼のあったキャリアパスポートについて。
教育関係者の人にしか関係ない内容かもしれませんが、たまにはこういうのにもチャレンジしてみます。

1.そもそもキャリアパスポートとは

キャリアパスポートと言っても教育関係者の人以外は聞いたことありませんよね?逆に教育関係者の人、聞いたことなかったらやばいです!
なぜやばいかというと、小学校では2020年度、中学校では2021年度、高等学校では2022年度から施行される学習指導要領に明記(キャリアパスポートとは書かれてないが)されており、全学校で来年度より開始をしなければならない(高等学校は先行実施)からです。ゆえに、今の時点で聞いたことがないということはもう間に合いません。教育関係者失格です。(言いすぎました。すみません。)

そのキャリアパスポートについて簡単に説明すると、以下の2点に集約されます。

① 生徒の活動を記録して蓄積しなければならない。
要するに、自分が学校生活を振り返り記録したものを1か所にためておくということです。いわゆるポートフォリオというやつですね。自分の経験は記録をしていないとただの記憶から思い出に変わってしまいます。その思い出は美化されるなど自分にとって都合よく書き換えられてしますので、正確な情報として残っていきません。
そこで、自分の経験を1か所にまとめておくわけですが、これ、小学校1年生から高校3年生までずっとためていきます。12年分。今までは1年間の活動の記録を担任の先生がポートフォリオしておく、もしくは、よくてそれぞれの学校の中で持ち上がっていくくらいで、校種をまたいで継続して記録していくということはあまりなかったのではないでしょうか。
それが、来年度から全学校で実施されます。学習指導要領に明記されている以上、実施しなければいけません。
ここだけの話、私のまわりの学校(K県)ではほぼ準備されていません。こんなことで学校教育は大丈夫なのでしょうか・・・

② 自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫しなければならない。
12年間という長期間に渡って記録をしていきます。教員得意の生徒のためになるから何でも足し算していく方式ではとてもとても量が多すぎて何が何やら分かりません。
後から詳しく書きますが、これはあくまで生徒自身の振り返りの材料となるものです。生徒が自身の変容や成長を分かりやすく自己評価できるようにしなければなりません。教員が行うのはここです。決して教員が無理やり書かせて評価するという、教員の自己満足であってはなりません。指導ではなく工夫をするのがキャリアパスポートにおいて我々教師のお仕事です。
あ、申し遅れました。私、高校の教員です。


2.キャリアパスポートに期待される効果

文部科学省の肝いり(たぶん)ではじまるキャリアパスポート。働き方改革(正しいとは思っておりませんが)をうたっている国が、効果の期待できないものをわざわざやらせるはずはありません(そう信じたい)。そこで、私なりにキャリアパスポートに期待される効果を考えてみました。

① 自分自身の変容や成長を感じることができる
上にも書きましたが、これ、当たり前のようですけど当たり前じゃないんです。その時感じた気持ちって思い出として書き換えられているので、今の自分の成長を正確に感じることって案外難しいんです。
12年前の感情とか覚えてませんよね?

学校というところは、個人の「今」を見て生徒を評価します。
そして生徒たちもそれが正当な評価だと思って一喜一憂します。(ここが大問題)
さらに社会もそれを正当な評価として受け入れています。

でも本当にこれは正しいシステムなのでしょうか?
このシステムのせいで正当な評価をされず埋もれていったこどもたちがたくさんいます。むしろこっちのほうが多いくらい。
そんな子どもたちが、自分自身を正当に評価できるようになったらどうでしょう?信憑性のない不確かな評価を恐れることなく、自分の価値を正々堂々と発揮することができたらどうでしょう?
世の中変わると思いませんか?
キャリアパスポートは、その可能性を秘めていると思うんです。

② 評価には現れないことを評価できる
学校の評価というのはある基準があってそれを達成するかしないかで決まります。
逆に言うとその基準に当てはまらなかったら評価にすら値しないわけです。
評価に値しないということは、その社会ではダメなレッテルを貼られてしまうということです。
そして、子どもたちは自信を失っていく。
そして、子どもたちはやる気を失っていく。
そして、子どもたちは埋もれていく。

これ、評価しているのが他人の物差しなんですよね。
この物差しで測れる子どもたちにとってはこれでいいんですが
測れない子どもたちは評価されないんです。
ここで日本の先生たちは何をするかというと、
その子どもたちを測る物差しを探すのではなく
自分の物差しで測ることができるように指導(強制)していくんです。
これが日本の教育です。

けれど、物差しは子どもの数だけあっていい。
そして、その物差しはすべからく評価されていい。

その物差しとなりうるのがキャリアパスポートだと思うんです。

③ 教員側も生徒の変容や成長を感じることができる
これは本来の意図とは違い、副産物的なものとなってしまうんですが、教員も生徒の過去を覗き見ることで、現在の生徒を正確に評価することができると思うんです。

例えば、目の前に数学が苦手な高校生がいるとします。
先生は言います。
「小学校(中学校)のとき、何をやってたんだ!」

だけど、その子は何をやっていたか分かりません。思い出せません。
なぜなら、その時に他人の物差しにあてはまらなかった結果、
やる気をそがれているから。

もちろん教員にも分かるはずがありません。
会話終了です。(そもそも会話にならない)

ここでキャリアパスポートの登場です。
小学校のときのキャリアパスポートをのぞいてみましょう。
そうすると、その時に彼が何をして何を考えていたかがそこにある。
そして、その時の先生が彼に対してどんな言葉がけをしていたかが分かる。
どこでつまずいたいたかが分かる。
そして、彼の物差しが分かる。
彼の物差しで判断してあげると、彼の変容や成長が教員にも分かる。

これで良くないですか?
教員の仕事は数学が嫌いな子どもに無理やり数学をやらせることではないんです。
それは数学という物差しで評価しようとしているだけなんです。
正確な評価をしてもらえば、自分の価値を分かってもらえば、
子どもたちは勝手にがんばりますよ!

ひとつの物差ししかもっていない大人より、
たくさんの物差しを持っている子どもたちのほうがすごいんです!


どうでしょう?このキャリアパスポート、なかなかなものだと思いませんか。
簡単に書くつもりが思いのほか長くなってしまいました。
すみません。
そして、まだ書ききれてません(笑)

ということで次回予告。(変更の可能性あり。いや、可能性大)

キャリアパスポートがもたらす最大のメリット
キャリアパスポートのデメリット
キャリアパスポートが実施直前にも関わらず浸透していない理由
キャリアパスポートでつなぐ、こどもの未来

今回は以上でーす。

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