「僕のママだって、資格さえあれば、きっと一緒に住んでくれたんだ」
僕は、ママを責められているような気がして、ちょっぴり腹立たしい思いだった。しかし、彼女の表情からは皮肉や非難の色は見つけられず、相変わらず顔をほんのり紅潮させ、幸せそうな目をして、息を弾ませた。
「おい、ランニングは終了だ。こっちで腕立てと腹筋五十回ずつやったら、今日は勘弁してやる」
教官が僕らを手招きしたので、駆け足のまま、トラックを横切り、彼の待つ筋力トレーニングのコーナーへと向かった。途中で彼女は顔を近づけてきた。汗の甘い匂いが近くで感じられた。
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