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水深800メートルのシューベルト|第343話
「なんだ? 婆ちゃんに朝帰りを咎められるのが怖いのかい、臆病な奴?」
バーナードがからかうように言ってきたが、僕は黙ったまま微笑を浮かべていた。メイソンは僕の近所の入り組んだ路地を走るのをためらっていたので、すんなり学校で降ろしてくれた。
座る場所もないバス停の近くにいても仕方がないので、学校の敷地に入り時間を潰すことにした。芝生を踏みながら、いつも通る旗の方を見て見ると、人影があった。
こんな早くに誰だろう? そう思って近づいてみると、カーキ色の塊が座っていた。海軍のナージフさんだった。放心したように膝を立てて座っている彼は、僕が芝生を踏む音に鋭い視線を向けたあと、安心したような顔を浮かべた。