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水深800メートルのシューベルト|第800話
ダカーリの動きものんびりしていたように見えた。つい、自分だけが動けてないのではと思うと、同じ境遇の彼を探してしまう。彼は、銃の扱いの動作順序を間違えて、教官に苦虫を噛み潰したような顔をされていた。彼も、隊列の中でお客さんのように見えた。
自由時間は、更に居心地の悪い思いをすることになった。ベッド近辺に残る訓練生はほとんどいなかった。ダカーリとフェルマンたちほんの数名が、相変わらず、陽気な空気を醸し出してカードゲームをしていた。しかし、他のみんなは、夕食とシャワーを済ませると、トラックのあるトレーニング施設に残り、ひたすらランニングや筋力トレーニング、ロープ結びの確認、緊急時の行動確認をして過ごしていた。まるで、訓練が夜まで延期されたようだった。僕は、すっかりリラックスできる場所を失くしてしまった。