水深800メートルのシューベルト|第1043話
「すぐに追い払います」
それを聞いて艦長はロバートの方へ首を巡らせた。ロバートはというと、先程までの威勢の良さが鳴りを潜め、病院に連れて来られた野良猫のように身をすくめていた。
「ほら、早く持ち場に戻りなさい。君達のできる事は……」
そう何かを言いかけた艦長の唇は青ざめていた。じっとロバートを見つめる細い目は、乗組員を動揺させないようにこのまま黙っているか、説明をした方がいいのかの狭間で苦悩しているようだった。頬はこけて無精ひげがちらちらと顔を出していた。ここ数日艦長を会わなかっただけなのに、何年も歳を取ったように見える。
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