水深800メートルのシューベルト|第647話
ラスウェルさんは首を振って皮肉な調子で言った。
「だといいのですが。この子は、最近までオークランドで有数のハイスクールギャングに所属していまして。オリビアさんが亡くなったのをきっかけに足を洗ったそうですが」
ママは、唇を噛んでいた。目の端がピクピクと動いていた。
「アシェル、ママは遠くにいても、あなたにはそんな子になって欲しいと思ったことはないわ。オリビアさんね、あなたに悪い影響を与えたのは」
「ち、違うよ。ギャングなんて大げさだよ、ラスウェルさん」
「お前、ふざけるなよ」
ラスウェルさんは、唸るような声で言った。彼の顔から笑みが消えた。僕はいたたまれないような気持ちになった。