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水深800メートルのシューベルト|第952話

 僕についてはその通りだと認めるしかなかったが、メリンダも? どうしてと尋ねるとゲイルさんは僕がわかっていないことを不思議がっているようだった。


「アシェルと結婚したい、みたいな事を言っていたじゃないか」
「あれは僕をからかっていただけですよ。聞いていたでしょう?」
「本当にそう思うのか? 数年ぶりにあった相手、しかも、お互いの人生に影響を与え合った相手にそんな余裕はあるのか? 話している時、本当に彼女の声を聞いていたのか? 表情を見ていたのか?」


 つまり、僕は彼女の表向きの言葉しか捉えていなかったということになる。からかわれているのに慣れてはいるが、そこに真理や本音が隠されているのを見抜くのは本当に難しい。

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