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水深800メートルのシューベルト|第85話

 赤紫色のお姉さんが、泣いている女の子とママを連れてどこかに行ってしまっても、お婆さんは動かなかった。この人は、さっきの女の子の家族ではないことがわかって僕はがっかりした。お婆さんは、空いた隣の椅子に座るように促がし、僕はそこにそっとお尻を乗せた。
 しばらく僕たちは黙ったままでいたが、お婆さんがバッグから飴を取り出して勧めてくれたので、それを口に入れると、お礼の他に、何か話しかけなきゃいけないような気がしてきた。

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