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水深800メートルのシューベルト|第411話

「ママのことを口にした奴は……」
 僕はもう一度引き金に指をかけた。


「わかったわかった、もう言わねえから。それを引っ込めろ、持ってていいから。弾は誰にも当たっていないから、よく考えろ。ほら、街中のヤバい連中がここに集まってくる。それに警官もな。お前が蜂の巣を突(つつ)いたんだ。さっさと車でここを脱出するぞ」
「俺はこんな狂った奴を車に乗せたくなんかねえよ」
 メイソンが震える声で言った。


「そんなこと言うなって」
 ブライアントは立ち上がり、メイソンを引っ張りあげながら言い添えた。
「このクソ度胸は、面白いぜ。それに、ここでアシェルが連中や警官に捕まったら、俺たちまで足がつくぜ。ヤケクソになったアシェルが俺たちのことを喋るかもしれないし、どうせこいつは馬鹿だから、『仕事』にも学生証を後生大事に持って来ているんだろうぜ」

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