「おい、そろそろ帰ろうぜ。メイソン、夜間運転はできないだろう?」
僕らが、岩から引き返して砂浜まで辿り着いた時に、ブライアントが心配そうな顔をした。墨色の砂浜に、黒い水が白い泡を先頭に打ち寄せてきていた。
「運転なんてどうってことねえさ。大丈夫だろ? あとは警官にさえ見つからなきゃ。それに、あの車さえあれば、パトカーもぶっちぎれるし」
メイソンは崖の上にあるはずの車の方向を見て、自信たっぷりに言った。
「アシェル二等水兵。何をしている? 旗のつもりか?」
海からの風で乾かそうと、僕は塗れたシャツを脱いで、ブンブンと両手で振り回していた。
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