水深800メートルのシューベルト|第1158話
靴音と、服の擦れ合う音、そしてため息だけが下層空間を支配していた。キャットウォークに留まっていた男も、誰かに肩を叩かれて、渋々動き出した。しかし、魚雷発射管に未練があるようで、そこから視線を外そうとはしなかった。
ステップを上がり、キャットウォークの高みから、まだ下に残っている艦長と副官の背中を見た。二つの背中は微動だにせず、墓石代わりになったハッチに祈りをささげているようにも見えた。その光景を見ながら、もしも、僕らが助かったら、これに乗艦する度にここ来よう、そう誓った。