水深800メートルのシューベルト|第979話
嫌味っぽく言う人間は、この艦内では珍しい。そもそも、潜水艦は高いストレスがかかるので、穏やかで精神が安定している人物が選抜されるはずだ。すると、ドビーや暴力的なロバートは、誰かの口添えでここに居るのかもしれない、僕のように。
そのことを深く考える間もなく、艦が更に大きく傾き、兵曹長はその傾きに無理に逆らおうとはせず、僕に強く体を押しつけてきた。
「はい、物品庫です。これから任務に就くところです」
密着した彼の体臭が鼻を突いた。臭いのはお互い様だし、艦の臭いもあるので仕方がないが、この嫌味な男に体をくっつけられると、不快な気分が増して顔をしかめそうになる。