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水深800メートルのシューベルト|第732話

「でも、相手の男は、働かないで酒とヘロインブラウンばっかりでさ。気分が乗ってくると暴力振るうし、逃げたの」


 その言葉を聞くと、パパのグリーンのトレーラーハウスが脳裏に浮かんだ。うちも同じだよと、言いそうになった。しかし、彼女はこの際吐き出したい話があるようなので、頷くだけにした。
「この国じゃ、大学行かないとブルシットジョブするしかなくて、使い捨てられて終わりなんだよね。あたしのママもピザの配達してたけど、バイクで事故を起こしてすぐクビになっていたし」


「ブルシットジョブ?」
「誰がやっても代わり栄えのしない、どうでもいい仕事のことよ」
 トリーシャは吐き捨てるように言った。


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