水深８００メートルのシューベルト｜第８０７話

「訓練延長でいいじゃない。たった二か月くらい、人生七十年以上生きる時代に、それっぽっちの時間、遠回りしてもなんて事はないわ」
その言葉に、ちょっぴり腹が立った。何か意地悪なことを言いたい衝動がつき上げてきた。

「トリーシャは、早く出られるからそう言えるんだ。それに、僕のパパはもっと早くに死んだよ」
　お酒のせいで命を落としたパパのことを持ち出したのは間違いだった。彼女の泣き出しそうな顔を見てすぐに後悔した。

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