狭い道を、遠くの小さな光を頼りに歩いて行くと、光は大きく眩しくなって、僕の眼に刺さってきた。雪山の窓から漏れる光だった。騒々しい音楽が耳に入ってきて、不愉快だった。
「おい坊主。お前帰らなかったのか? ははん、ママに追い出されたんだな」
顔を観なかったが、声の主はさっき絡んできたおじさんだと思った。僕の肩に手をかけ、耳元に酒臭い息をかけてきたので、いやな気分になり、逃れようと肩をひねった。
「なんでえ、可愛くねえガキ」
「放っておきなよ。大方、家の手伝いをサボったのよ」
別の声が聞こえてきた。僕は小さく首を振って、雪山からも逃げるようにして去った。
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