突然、電灯が消えた。消灯時間になったのだ。いつの間にか体が震えて兵舎がうすら寒くなったのに気づいた。そこで、毛布を被った。
体が自分の体温を感じてきた頃、下からエウヘニオの声が聞こえてきた。半分空気を吐き出したような、かすれた小さな音。
「アシェル起きているか?」
「うん」
すると、さっきよりもはっきり聞こえる声で言った。
「あの女の子……、トリーシャだっけ? 何か話したのか? 愛の告白とか、お別れとか?」
内容とは裏腹に、声にからかうような調子はなかった。
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