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水深800メートルのシューベルト|第955話

「誰と暮らすことを選ぼうと、私は君の意思を尊重したいと思う。助けてもやる。しかし、助けてはやるが、君の人生を決めることはできない。何を選んでも後悔するかもしれんが、男が決断すれば、結果がどうあれ諦めがつくってもんだ。結局、何が正しかったなんてことは、人生が終わってみなきゃわからんよ。医者として死に立ち会った経験から言うが、患者は死ぬ間際、たいてい瘦せ衰えて、飯も食えず、目がぎらつかせながら生にしがみついている。それまでの事を振り返っている余裕なんてない。そして、自分の人生が正しいかどうかを知らずに、あっという間にそこから転げ落ちるようにして意識を失う」(そう、ゲイルさんが言った。)


「僕も、死ぬときには人生を振り返ることがないのでしょうか?」
 ふと、パパが血を吐いた時のことを思い出した。

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