「嘘よね? あなたはそんな酷いことができるような人じゃないもの」
(そう、トリーシャは言った。)
君に僕の何がわかるっていうんだ? 心の中で叫んだが、トリーシャの黒く哀願するような目を見ていると、その叫びは声にならず、溶け行くようだった。
「別に……もう終わったことだから、どうでもいいんだ」
口に出せる精一杯のことを言った。
「ねえ、どうして本当のことを言って説明しないの? ミスをしただけだって。誤解されたままじゃない。悔しくないの?」
それを聞くと益々苛立ちをおぼえたが、彼女にぶつける気にはなれなかった。
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