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水深800メートルのシューベルト|第584話
そして紙に何か図形を書き込みながら、ぶつくさと呟いていた。しばらくすると、彼は目を上げてポケットから名刺を取り出した。
「いいか、取り調べには応じろ。逃げるんじゃない。この名刺を出せば、逮捕はないだろう」
僕は、家に帰れないという事態を回避できたと思い、ほっと息をついた。
「ただし」ラスウェルさんはそこで一旦黙り、名刺の裏に細かく何かを書きつけてから、それを差し出して言った。
「メリンダに言われた通りに答えろ。『呼ばれて彼女の家には行ったが、中には入っていない。頼まれてメイソンを呼び出した。銃は、以前遊びに行った時に紛失した』それ以外の事は一切言うな。私に任せてあると、一辺倒でいい」
僕は礼を言って、オフィスを後にした。