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水深800メートルのシューベルト|第703話

 次の弾を撃とうと背筋と腕を伸ばした時だった。右隣のメッシュになった金属の仕切りが揺れた。見ると、ロープを助けてくれた女の子が、困惑した表情を浮かべて、こちらを見て、障壁を叩いていた。僕はイヤーマフの右耳をそっとずらすと、教官が端の方でドアにもたれて目を閉じているのをちらと見てから、右側に寄った。


「弾がでないの、故障かな? わかる?」
 彼女の声は半ば銃声でかき消されていたが、口の動きでそう言っているのがわかった。


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