水深800メートルのシューベルト|第128話
パパは僕たちの傍に来ると、眩しそうに目を細めて見下ろしてきた。顔が朝日を浴びてオレンジ色に染まっていた。
「まったく、ツイてねえな。この坊主が来てから碌なことがねえや。役には立たねえし、具合は悪くなるしよ。五十ドルぽっちで疫病神なんか預かるんじゃなかったぜ」
少し嘲るように笑っていた。
「ジョーンズ。この子をそんな風に言うのはやめて。たまに仕事がある時ぐらい預かってくれてもいいでしょう? そもそも、あなたがお酒を飲み過ぎなければ病気にはならなかったのよ」
「パパ、ごめんなさい。でも、お酒を飲まないでって言ったんだよ」
僕がちゃんと止めなかったのでパパが倒れたことが、ずっと心に響いたままだった。だから、もう一度言っておかないと、と思ったのだ。