水深800メートルのシューベルト|第623話
ラスウェルさんは、軽蔑したような目をした。
「どうやって? 金はあっても住む家も無くなるし、学校だって受け入れちゃくれないよ」
誰かの家に転がり込めるだろうか? それともいつか見た、橋の上にあるテントの住まいにまぎれ込み、自分もテントを張って暮らそうかと考え、それを伝えた。
「ふん、だから世間知らずのガキは嫌なんだ。ひとりで暮らすだと? お前なんかあの辺のホームレスに身ぐるみ剝がされて終わるぞ」
僕は口をつぐんだ。するとナージフさんが言った。
「そうするくらいなら、名義だけでも誰かの養子になって、今住んでいるアパートに住み続けるんだ」
「お前、馬鹿だろう? そんな都合の良い話に乗っかるやつがいるものか。いたとしても、アシェルから金を巻き上げるか、彼を利用しようとする輩しかいないぞ」
ラスウェルさんは、鼻を啜って、首を横に向けた。