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水深800メートルのシューベルト|第36話
パパはさらに何かを言いかけたが、ママの怯えた顔を見るとすぐにとりなすような態度になった。
「いや、例えばの話だって。お前、アザートンで荒稼ぎするんだろ? 三日間も時給十八ドルの仕事をするっていうじゃねえか。きっとチップだってたっぷりとはずんでもらうんだろう? そうなったら、五百ドルは固いな。それなのに、俺にはたったの五十ドル。そりゃひどくないか?」
気持ち悪いくらいの甲高い声。ママは青い顔をしていたが、すぐに大人らしい強い調子に戻った。
「いい? 私だって家賃とか保険の支払いがあるの。五百ももらえないし、あってもすぐに無くなってしまう。精一杯なの。でも……いいわ。チップをもらったら、それはあなたに上げる。しっかりとアシェルを預かって」