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水深800メートルのシューベルト|第1070話
「まさか。きっとこれも後でいい思い出になるさ。下水から出てきた鼠のようにずぶ濡れになって修理した思い出がな。ああ、早くパースに行きたいよ。アシェル、これから勤務だろう? その前に発令所に行って状況を訊いてきてくれよ。俺がその情報を広めておいてやるからさ」
彼はそれきり口をつぐんで、目を閉じた。
ベッドの柵と天板の間を、体を擦るようにすり抜けて、床に降りた。ドンと勢い余って足をつけると、誰かの舌打ち音がした。僕は、逃げ出すようにベッドルームのハッチを出た。