水深800メートルのシューベルト|第131話
「俺にはわかるんだ。いつも二日酔いみてえに気持ち悪くてよ。頭もぼんやりするし、変な物が見える時もあるし、血は止まんねえし……、俺はもう駄目なんだ」
パパの目にまた涙が溜まっていた。
「きっと疲れているのよ。送っていくわ」
ママは僕の手を引いて、パパの背中を押した。
「あなたを送って行って、すぐに仕事に戻れば、欠勤にはならないから」
「おい、まさかあの役立たずを、俺にまた預けるんじゃないだろうな?」
パパは振り返り、僕を汚れたものを見るように見つめた。
「ジョーンズ、我慢して。私、仕事途中で抜けだしてきたのよ。クラークソン家の片づけはあと二日かかるの。終わったらすぐ迎えに行くから」
「冗談じゃねえよ」
その時、ママが握っていない方の僕の手を、別の手が引っ張ってきた。