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水深800メートルのシューベルト|第440話

 これから起こることが現実とは思えず、僕は居たたまれなくなった。突っ立ったまま何をしていいのか分からず、部屋の隅にある姿見やベッドの枕元に飾ってあるピカソを真似したような安っぽい絵画を眺めていた。


「どうしたの? 君、何しに来たの? 早くしなさいよ。バスルームはそこよ」
 彼女は入り口のすぐ脇にあるドアを指した。


「ちゃんと時間をかけて洗うのよ。私、汚いのは嫌なのよ。タオルは中にあるわ」
 僕は背負っていた鞄をベッドの上に置くと、バスルームに入った。

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