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水深800メートルのシューベルト|第1073話

「どうせ、浮上しないんだろ?」
 僕の言葉に、彼はピクッとこめかみを動かした。


「命令が出ていないだけだ。動けない。今は待つだけだ」
 僕は、手を引っ込めて、周囲を見渡してから訊いた。
「艦長は?」
「見ていないな。そう言えば、副艦長もだ」
「いつから?」
「さあな、いつだったっけ。お前は?」


 操作員は、隣の操舵コンソール前の男に声をかけた。男は「知らないよ。ここ、二十四時間くらいじゃないか? 用があるなら艦長室に行けばいいんじゃないか?」


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