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水深800メートルのシューベルト|第1061話

「上官が話をしているところに顔を出すな!」
 艦長は叱りつけてきたが、その声は震えていた。僕は、目を合わせないよう真っ直ぐゲイル先生のデスクの上の壁に顔を向け、目の端で彼の表情を盗み見た。唇が真っ青だった。


「不眠症か? アシェル。よくある事だ」
 ゲイル先生は、慌てて棚から薬を出しながら、重い空気を壊そうとするように言った。敢えて気さくに話してくれたのが救いだった。
「気をつけます」
 艦長に謝罪した僕に、先生は薬を包装シートごと渡してくれた。


「君は話があって来たのだろうが、生憎、先客があるからね。今度……な」
「申し訳ありません、失礼します」
 医務室を出て、早くそこから遠ざかろうとすると、ゲイル先生にシャツを掴まれた。

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