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水深800メートルのシューベルト|第761話
教官の言葉に、ダカーリが、すぐに椅子と台の狭い間隙に体を折り曲げて横になった。僕は、二つ折りの担架を広げ、両手でダカーリの頭を持ち上げた。
「アシェル・スコット、何を考えている。殺す気か!」
教官の鋭く刺さるような声に驚いて、思わず頭を持った手を離してしまった。油断していた彼は、床に頭をぶつけ、こちらに怒りの目を向けた。
「ご、ごめん」
「そいつが、頚椎損傷をしていたら、今ので悪化させてるぞ。それに、まずは生存確認だろうが! 負傷者への初期対応は習っているはずだ。お前は死人を増やすつもりか?」
教官は呆れたような声を発して、こんな訓練生を見たくもないといった調子で目を瞑り、「もう言わん! 教えるとお前たちのためにならない」と顔をそむけた。