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水深800メートルのシューベルト|第313話

 代わりにブライアントが後ろを振り向いて答えた。
「ボスの気分次第だけどな。ゴールデンゲートブリッジ近くの海に行くらしいぜ」


 メイソンがギアを動かした途端、エンジンの音が低く大きくなり、背中がシートに押しつけられた。隣の車線の隙間に車がねじ込まれるのを見て、彼はやっと落ち着いた顔つきで返事をした。
「ああ、マーシャルズビーチだ」


 ビーチの名前を聞いたことはなかったが、橋の名前を聞いて、僕はほっとした。ゴールデンゲートブリッジはサンフランシスコにあって、海峡にかけられた橋だ。だとしたら、夜までには帰れるかもしれない。

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