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うにっき帳 vol.20 |自分史編|ドレカツ丼(3)
はじめに
こんにちは。吉村うにうにです。「うにっき帳」のvol.20を掲載します。
「うにっき帳」は日記と銘打っていますが、①日記編 ②語彙増量編 ③自分史編の三部のいずれかを取り上げます。
今回は、「ドレカツ丼」の続きです。前回と前々回はこちら。
では、よろしくお願いします。
尚、内容の文章は常体で描いております。
日付は自分史編の場合、メインの事件が起きた日を記載しています。
二〇〇一年夏頃 ドレカツ丼(3)
残そう、頭の中にすぐその考えが浮かんだ。しかし、自分が選んで注文した食べ物を一口食べただけで残す、その事への抵抗感が強かった。折角、カフェテラスのおばちゃんが作ってくれたのに、それをほとんど残すなんて。だが、あの味はもう二度と口にしたくない。数秒だったと思うが、自分の中で激しく葛藤があった。
悩んだ末、いくら何でも一口で丼を返却口に持っていくことは躊躇われたので、もう一口食べてみる事にした。もしかしたら、このたれは、カツだけでは楽しめないように作られているのかもしれない。ご飯と一緒に食べたら……。私は、カツとご飯を箸で挟み、その塊を一思いに、口に入れてみた。
次の瞬間、本能が食べたものを吐き出そうとしていた。す、す、酸っぱい! 吐き出すのは我慢したが、その不味さに咀嚼して味を口の中に滞在させる勇気も出ず、かろうじて飲み込んだ。
次の瞬間、「もう無理、悪いけど残そう!」その考えだけが私を支配した。私は、カフェの店員が返却口の近くに居ない隙に、二口しか食べていない丼とトレーをさっと戻すと、逃げるように階段を下りてカフェテラスを後にした。
食べ物を残さないように教育を受けてきた私は、罪悪感で一杯だった。しかし、どう考えても、味噌の味がしない。とにかく酸っぱい。教室に戻る道すがら、あれが何の味に近いかを考えた。そして、一つの結論に至った。あの味噌カツ丼のたれは「ドレッシングの味」だった。
教室に戻った私は、クラスメートの集まっているところに顔を出し、命名したばかりの「ドレッシングカツ丼」の不味さを吹聴した。自分で注文した食べ物を残したのは人生初で、それが衝撃的だったので、誰かに話さないと心の整理がつかなかったのだ。好き嫌いの多い私だが、自分の好きな食べ物くらいはわかっている。そして、自分で選んだものはそう外れる事はないという事も。しかし、それが完全に裏切られたのだ。
(つづく)
さいごに
いかがだったでしょうか。書いていて、あの味を思い出し、思わず顔をしかめていました。この後、クラスメートの行動に驚きます。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。