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水深800メートルのシューベルト|第1055話

「あれから一睡もできないし、何を食べても砂の味だ」
「気分はどうですか?」
「最悪だよ。自分は艦長をやるべきではなかった。逃げ出したいくらいだ。頭の中をずっと同じ考えが渦巻いている……」


 低くどんよりとした声が、僕の心にも嫌な響きを立てた。まるで、自分がここに存在してはいけないと言われているように。
「ええ、続けて下さい」
 先生の声は、抑揚を失くしてひたすら相手の気持ちを受け止めようとしている様に聞こえる。


「でも、海の閉じられた空間では、それも不可能だ。だからこの艦にとどまり続けるしかない。だから……苦しい。すまないね、こんな愚痴をこぼすような艦長で。こんな私は嫌われて当然だろうね」

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