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水深800メートルのシューベルト|第306話

車は、想像していたより大きくなかったが、力強さを主張しているようで、どんな車も抜き去りそうな迫力があった。それは、グレーの車体でメタリックな輝きを放っていた。車体のボンネットには大きな穴が開いていて、まるで雄牛が荒い鼻息を吐くように、そこからエンジンの蒸気が噴き出しそうに思えた。ボディは丸みを帯びていて、向かいから来る風を全て切り裂きながら後ろへ流してしまいそうなイメージが湧いた。車体の後ろには大きなウイングが、空に向かってツンと反り返っており、僕はその形状が気に入ったので、少しくらいならドライブにつき合ってもいいような気がしてきた。


「おい、バーナードにアシェル。早く乗れよ」
 メイソンが顎をしゃくって後ろのドアを示した。

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