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水深800メートルのシューベルト|第311話

いったい、どういうつもりでこの道路を飛ばしているのか? ただ、僕を驚かすためにこんなドライブをしているのかもと思うと、ちょっぴり腹が立った。


 彼は、興奮と緊張の入り混じった顔で、口元には微かに笑みを浮かべていた。
「ヘイ! こいつら遅いぜ。バッカじゃねえの!」
 と一台の車高の低い車を抜き去る時に、吐き捨てるように言った。


 彼はシートから背を離して前屈みになっていた。前後左右にガクガクと動くギアを握る手がかすかに震えていた。その腕は力強く筋張っていて、金色のうっすらしたうぶ毛がふわりと立ち並んでいるのが見えた。

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